全世界で、生涯のうち5人に2人ががんと診断され、またがんによる死亡者はエイズ、結核、マラリアによる死亡者の合計よりも多いと推測されています(アメリカがん協会発表, 2011)。このような状況の中、がんと闘うため、従来のがん研究とは結びつかなかった様々な分野でがん対策の研究が行われており、その中の一つの方法として進化生物学的アプローチが挙げられます。
進化生物学でがんは解明できるのか?この度Evolutionary Applications誌から、がんと進化論をテーマとした特集号が出版されました。著者の一人であるAthena Aktipis女氏は「がんは多種多様であり、進化論を用いることでがんを複雑かつ進化している生態系として考えることが可能になる。当アプローチを用いることで様々な種類のがんの理解、治療、予防を改善することができる」と語っています。
当特集号では「なぜ人は強力ながんの抑制メカニズムがあるにも関わらずがんになるのか?」「自然淘汰、突然変異、遺伝的浮動などの進化の原理は、がんの生態系でどのように当てはまるのか?」「世界のがん発生率を最低限に抑えるために、進化論はどのように利用すればよいのか」等の疑問を取り上げます。
Aktipis女史は「がんを生態系として捉え、進化的アプローチを用いることで様々ながん研究を総括し、解明することが可能になる。森に例えると、個々の木の特性及びそれらを取り囲む環境との相互作用によって森の状態が定められるように、がんも遺伝的に異なる個々の細胞で構成され、細胞同士の相互作用及びがんと体の相互作用に左右される。」と締めくくっています。
⇒ Evolutionary Applications, Special Issue: Cancer
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