セレン(セレニウム)は抗酸化サプリメントとして人気があり、その効果のひとつに心疾患予防が挙げられていますが、医学的に十分な裏付けはこれまで得られていません。一方で、セレンの過剰摂取は2型糖尿病の発症リスクを高めるという報告もあり、その効果と副作用の検証が求められていました。
このほど、英Warwick大学を中心とするグループは、過去に行われた12のランダム化試験(対象者19,715人)のデータを基にメタ分析を行った結果、セレン・サプリメントの摂取に心疾患予防効果があるというエビデンスは認められなかったとして、The Cochrane Libraryにレビューを発表しました。
⇒ Selenium supplementation for the primary prevention of cardiovascular disease (The Cochrane Library)
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このレビューによると、セレン・サプリメントの摂取者とプラセボ対照群の間には、心疾患発症リスクの有意な差は確認されませんでした。一方、セレン・サプリメントの摂取者には2型糖尿病の発症リスクがわずかに高まる傾向が見られましたが、統計的に有意な差ではありませんでした。
レビューの著者のひとりSaverio Stranges氏は、今回データを入手できた試験の多くは、栄養摂取が十分な米国の成人を対象にしたものだと断ったうえで、今回得られたデータからは、栄養状態の良い人にセレン・サプリメントの摂取が心疾患予防効果をもたらすとは認められないと語りました。Stranges氏はまた、「セレン・サプリメントの摂取はおそらく無害無益だが、少なくともセレンの多量摂取者では、2型糖尿病の発症リスクが一定程度高まる可能性を完全に否定できない」とする一方、栄養状態が悪く食事からのセレン摂取が不足している人への効果はまだ分かっていないが、既にセレン摂取が足りている人々がむやみにセレン・サプリメントを使用することは肯定も推奨もされないと語っています。
■ この研究結果についてのプレスリリース
⇒ Current Evidence Does Not Support Selenium for Preventing Heart Disease in Well-Nourished Adults
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