昼寝により学習能力が上がることは以前より言われていますが、睡眠は記憶や情報を固定させるだけではなく、目覚めた時に新しい情報を取り入れる脳のキャパシティを増やす可能性があることを示唆した研究がヨーロッパ神経科学会の公式誌European Journal of Neuroscienceで発表されました。当研究は深い眠りの特徴である徐波活動(SWA-Slow Wave Activity)に焦点を当て、昼寝がどのように学習能力向上に貢献するかを示します。
⇒ Napping to renew learning capacity: enhanced encoding after stimulation of sleep slow oscillations
Daria Antonenko, Susanne Diekelmann, Cathrin Olsen, Jan Born and Matthias Mölle
*Abstract(抄録)は無料公開。全文を読むにはアクセス権が必要です
⇒プレスリリース How Napping Renews our Brain’s Capacity to Learn
昼寝後に、画像の内容や単語の組み合わせ・リストのように言葉で表現できる情報(「宣言的情報))と、指タップ運動(「手続き的技能」)をそれぞれ記憶するテストを行いました。その結果を、昼寝中に刺激を与えるふりだけをしたプラセボ群と比較したところ、刺激によってSWAが増加したグループでは、宣言的情報の記憶が大幅に改善されたことが分かりました。一方、手続き的技能の記憶では、グループ間に違いが見られませんでした。
宣言的情報の記憶は、脳の海馬の影響を受けることが知られています。研究者らは、今回の結果を、睡眠時のSWAには覚醒時に飽和に近づいていた海馬シナプスネットワークを活性低下させ、それによって宣言的情報を記憶するための脳のキャパシティを回復させる働きがあるという可能性を示唆するものと考えています。
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