<コクラン・レビュー> 重大な脊椎病変に由来する腰痛患者を特定するための「レッドフラグ」は根拠に乏しいと判明|正確性に欠け、不要な追加検査を増やしている可能性

The Cochrane Library logo
腰痛診断の際には、がんなどの脊椎病変の可能性がある患者を特定するため、レッドフラグと呼ばれる指標の確認が必要である旨臨床ガイドラインでは勧告しています。しかしこの度The Cochrane Libraryに掲載されたシステマティック・レビューでは、現在用いられているレッドフラグのほとんどは、単独では脊椎病変の指標として不十分であり、複数のレッドフラグの組み合わせの有効性をさらに調査する必要があると発表されました。

Red flags to screen for malignancy in patients with low-back pain
Nicholas Henschke, Christopher G. Maher, Raymond WJG Ostelo, Henrica CW de Vet, Petra Macaskill, Les Irwig
*Abstract(抄録)は無料公開。全文を読むにはアクセス権が必要です

腰痛はよくある症状で、明確な原因が特定できないこともめずらしくありませんが、腰痛患者の1-5%は腫瘍等の重大な脊椎病変が原因となっていることが報告されています。しかし、脊椎病変を探すためにすべての腰痛患者にいきなりX線やMRIによる画像診断を用いると、該当しない多くの患者に不必要な検査を増やしてしまうことになります。そのため、最初に理学検査を行うとともに年齢や腫瘍の病歴などをチェックして、重大な疾患の予兆に該当する項目があった場合にのみ再検査を行うことを臨床ガイドラインでは推奨していますが、実際にはこのレッドフラグが脊椎病変の有無を正確に診断しているという根拠がほとんどないことが今回の分析で判りました。

当調査は20種の異なるレッドフラグを用いた、6,622人の患者を対象とする8件のコホート研究をレビューしました。レッドフラグの項目には腫瘍の病歴、発症年齢が50歳以上、絶え間ない痛み、原因不明の体重減少、一か月以上症状の改善がない等が含まれています。調査の結果、「腫瘍の病歴」を除いて他のレッドフラグ項目を単独で見た場合に、脊椎病変の発見につながる根拠は不十分で、単独の項目を見るのみでは指標にならないと示唆されました。しかも、レッドフラグに該当した患者の多くは、画像診断の結果、陰性であることが判明していました。筆頭著者のNicholas Henschke氏は「単一のレッドフラグを、追加検査を行うかどうかを決めるための指標にすることで、それ自体有害にもなりうる不要な検査を促すことになってしまう。脊椎病変は稀な疾患であるため、レッドフラグが有効かどうか判断するためには大規模な研究が必要」と語っています。

プレスリリース原文
Spinal Cancer: Guidelines for Diagnosis Unsupported In Patients with Lower Back Pain

No related posts.

カテゴリー: 腫瘍学   タグ:   この投稿のパーマリンク

コメントは受け付けていません。