遺伝子変異により膀胱がんのリスク・再発・進行・患者生存を予測できる可能性を示唆

アメリカでは毎年約15,000人が膀胱がんで死亡しており、男性では4位のがん疾患となっています。この度、アメリカがん協会(the American Cancer Society)の公式誌Cancerで発表された新しい分析結果で、ある特定の細胞経路における遺伝子変異と、膀胱がんのリスク・再発・進行・患者生存が関連していることが明らかになりました。この分析結果は今後の膀胱がん検診や治療に役立つ可能性を示唆しています。

Genetic variations in regulator of G-protein signaling (RGS) confer risk of bladder cancer
Eugene K. Lee, Yuanquing Ye, Ashish M. Kamat, and Xifeng Wu
*Abstract(抄録)は無料公開。全文を読むにはアクセス権が必要です

⇒プレスリリース Genetic Alterations Linked with Bladder Cancer Risk, Recurrence, Progression, and Patient Survival

様々な細胞経路に重要なGタンパク質シグナル伝達の調節因子(RGS-regulators of G-protein signaling)の変異が数種のがんに関与することが分かっていますが、今回の研究は、膀胱がんの発病リスクや進行においてRGS変異が果たす役割を調べるために行われ、803名の筋層非浸潤性・筋層浸潤性の膀胱がん患者と803名の健常人が調査されました。17のRGS遺伝子において95の一塩基多型(SNP-Single Nucleotide Polymorphism)を確認したところ、RGS4遺伝子上のrs10759変異が膀胱がんリスクと最も関係が強く、膀胱がん全般のリスクが0.77倍に減少することが確認されました。また、他の不利な変異が増加することで膀胱がんのリスクが上がることが研究者らにより確認されました。
筆頭著者であるDr. Leeは「今までは集団レベルでの膀胱がんスクリーニング検査は難しかったが、今回の研究結果で遺伝子スクリーニング検査に用いる分子マーカーを特定するための第一歩を踏めたかも知れない。この検診により、既知のタバコや化学品暴露などのリスクファクターを超えて、膀胱がんリスクの高い予備軍を特定するのに役立つと思われる。」と語っています。

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カテゴリー: 泌尿器科学, 腫瘍学   タグ:   この投稿のパーマリンク

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