抗不整脈薬アミオダロンを多量使用した男性に発がんリスク上昇の可能性 - 台湾での調査結果がCancer誌で報告される

CancerTaipei Veterans General Hospital(台湾)のVincent Yi-Fong Su医師らのグループが抗不整脈薬アミオダロンの使用者6,418人を対象に行った調査の結果、特にこの薬を治療の1年目に多量に使用した男性の間で、統計的に有意なレベルのがん罹患率上昇が見られました。この結果は、このほどアメリカがん協会の公式論文誌Cancerで報告されました。

 ⇒ Su, V. Y.-F., Hu, Y.-W., Chou, K.-T., Ou, S.-M., Lee, Y.-C., Lin, E. Y.-H., Chen, T.-J., Tzeng, C.-H. and Liu, C.-J. (2013), Amiodarone and the risk of cancer. Cancer. doi: 10.1002/cncr.27881
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1985年に米FDAによって承認されたアミオダロンは、非常に効果の高い抗不整脈薬として各国で使用されるようになりましたが、これまでに一部の種類のがんについて、罹患リスク上昇との関連を示唆する研究結果が発表されたことがあります。両者の関連について大規模な調査が行われたのは、今回が初めてです。

同グループの調査は、台湾で1996~2008年の間にアミオダロンを28日以上使用した患者6,418人を対象に行われました。今回の報告によると、対象者のうちがんに罹患した人は280人で、全人口平均と比べてボーダーラインレベルの統計的有意さで罹患率の増加を示しました。対象者のうち、男性では統計的に有意な18%のがん罹患率上昇が見られましたが、女性では有意な変化が認められませんでした。

さらに詳しく見ると、男性で、なおかつ使用開始1年目に1日使用量が多かったグループでは、罹患率が46%上昇したことが分かりました。一方、1日使用量が少なかったグループでは、男性・女性とも罹患率の有意な変化は見られませんでした。なお、対象者が発症したがんの種類には、特に目立った傾向はありませんでした。

今回の調査には、肥満・喫煙・家族歴といった発がんリスク要因を考慮していないなどの限界があるため、この結果が直ちにアミオダロンの使用と発がんリスク上昇との因果関係を示すとはいえません。両者の関連について今後さらなる調査が必要となりますが、Su医師らの研究グループは、現在のアミオダロン使用者に大規模なスクリーニング検査を行って潜在がんの有無を調べるのは非現実的だとする一方、今後行われるアミオダロンの臨床試験では、がん罹患との関連を常に報告するよう提案しています。

■ 発表資料: Arrhythmia Drug May Increase Cancer Risk

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