妊娠中は少量の飲酒でも胎児に悪影響をもたらすと言われていますが、この度王立産科婦人科学会の公式誌BJOGに発表された論文によると、アルコール摂取が少量の場合、子供の行動・認知障害リスクの上昇をもたらさないと報告されました。妊娠中の大量のアルコール摂取は生まれてくる子供の健康及び発育に悪影響を及ぼすことは立証されていますが、少量のアルコール(1週間に1-2ユニット。1ユニットはビール約160cc分に相当)を摂取した場合の影響についてはよくわかっていないため、今回の調査が行われました。
⇒Light drinking versus abstinence in pregnancy – behavioural and cognitive outcomes in 7-year-old children: a longitudinal cohort study
Y Kelly, M Iacovou, MA Quigley, R Gray, D Wolke, J Kelly and A Sacker
*Abstract(抄録)は無料公開。全文を読むにはアクセス権が必要です
当研究は2000年9月~2002年1月にイギリスで生まれた幼児を対象とした全国的な長期的調査である英国ミレニアムコホート研究(MCS)で得られたデータを基に分析し、10,534人の7歳児が調査対象となりました。子供に多動性障害、注意力不足、行動の問題等がないか、社会的・情動行動を把握するために、自宅でのインタビューや両親・先生によるアンケート調査が実施され、子供たち自身には数学・読解・空間能力における認識能力試験が行われました。
その結果、妊娠中に全く飲酒しなかった母親グループよりも少量のアルコールを摂取した母親グループの方が生まれてきた子供の行動障害リスクが低くかったことが判明しました。しかし、これらの差は、母親の社会的背景についての統計上の調整後は大幅に減ったようです。
今回の調査では妊娠中の少量のアルコール摂取は子供の小児期の初期から中期までは影響がないことが示唆されましたが、まだどの程度の摂取量であれば安全か、また個人の感受性によってその量が変わる可能性があり、引き続き調査を必要としています。そのため、現段階では妊娠中はお酒を飲まないことが最も安全な選択肢かも知れないと結論づけられています。BJOG誌副編集長のJohn Thorp博士も、「週あたり1-2ユニットを超えない範囲であれば、妊娠中の飲酒は生まれた子供の初期~中期の発達に影響しないという今回の発見は、英国保健省による現行のガイドラインと一致する」とした上で、飲酒がどの程度の量に達すると悪影響をもたらすかは現時点で不明であり、不安を持つ妊婦は一切飲酒しないのが最も安全な選択肢だろうとコメントしています。
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