タバコに含まれるニコチンによる害は良く知られていますが、ニコチンはタバコと同じナス科の植物であるナス・ピーマン・トマトなどにもごく微量ながら含まれています。このニコチンを含むナス科の野菜を食べることでパーキンソン病発症のリスクが軽減される可能性を示唆する研究が、アメリカ神経学会・小児神経学会の公式誌Annals of Neurologyで発表されました。
⇒Nicotine from edible Solanaceae and risk of Parkinson disease
Susan Searles Nielsen, Gary M. Franklin, W. T. Longstreth, Phillip D. Swanson and Harvey Checkoway
*Abstract(抄録)は無料公開。全文を読むにはアクセス権が必要です
⇒プレスリリース Could Eating Peppers Prevent Parkinson’s?
パーキンソン病はドーパミンを生成する脳細胞の減少により運動障害が起きる疾患で、顔、手足などが震え、間接が固くなり、バランス感覚を失うなど、動き全般が遅くなる症状を伴います。アメリカでは現在約100万人がパーキンソン病を患っており、毎年6万人が発症、世界では1000万人の患者がいると言われています。未だにパーキンソン病の治療法は確立していませんが、対症的療法として薬物投与や脳深部刺激療法(Deep Brain Stimulation: DBS)等の治療が行われています。
ナス科の植物であるタバコを吸うことでパーキンソン病発症のリスクが減少することが過去の疫学的調査で一貫して報告されていますが、その効果がタバコに含まれているニコチンや他の要素の影響なのか、もしくはパーキンソン病が進行中の患者が診断を受ける前に、行動への何らかの影響によってタバコを吸わなくなっていたためか確認されていませんでした。
今回の研究はワシントン大学の神経科クリニック及びワシントン州西部地域の団体保険協同組合で、1992-2008年にかけてパーキンソン病と診断された490名と対照群の644名が調査の対象となりました。対象者に食生活のアンケートを行い、ピーマン、トマト、トマトジュース、及びジャガイモの消費量を調べ、また、他の野菜の消費量、年齢、性別、人種・民族性、喫煙状況、及びカフェインの摂取量なども加味してパーキンソン病発症との関連を調査しました。
その結果、野菜全般の摂取はパーキンソン病発症のリスクに影響を与えませんでしたが、ナス科の野菜の消費が増えるほどパーキンソン病発症のリスクが下がり、とりわけピーマンにこの傾向が強くみられることがわかりました。また、ナス科野菜の摂取による発症リスク低下の効果は、非喫煙者にほぼ限定して見られました。
筆者らは食事として摂取可能なニコチンとパーキンソン病発症のリスクを調査した初めての研究であると述べており、引き続き研究を深めることで当発見がパーキンソン病予防の食事・薬剤介入につながる可能性を示唆しました。
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