「MDMA」や「エクスタシー」の名前で知られる合成麻薬3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン (3,4-methylenedioxymethamphetamine) は、日本をはじめ多くの国で違法薬物として規制対象になっていますが、欧米を中心に若者の間でレクリエーション・ドラッグとして普及し、深刻な社会問題となっています。
MDMAの摂取がもたらすさまざまな害のひとつとして、記憶障害を引き起こすという説が有力視されてきました。しかし、同じ調査対象者でMDMAの使用前・使用後の状態を比較した調査がこれまでなかったため、MDMA使用者に見られる記憶障害が使用前からもともと存在した可能性を否定できず、確実な証拠を得るには至っていませんでした。
昨日26日にAddiction誌電子版で発表された論文で、独ケルン大学のDaniel Wagner博士らの研究グループは、MDMAの使用前後での認知機能の変化を調べるために1年間にわたる調査を実施した結果、MDMAが記憶障害の原因となることを裏付ける証拠を得たと報告しました。それによると、MDMAの使用経験のない149人を対象に認知機能を調べ、そのうち1年後に行われた2回目の調査に参加した109人に対して再検査を行ったところ、1年間にMDMAを使用したグループと使用していないグループとの間で、短期記憶の低下について統計的に有意な差が見つかりました。中には、MDMAを1年間に10錠しか使用しなかったのに記憶障害の兆候が見られた例もあったそうです。
■ プレスリリース: The debate over ecstasy continues: New study finds evidence of memory impairments with one year of recreational use
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⇒ Wagner, D., Becker, B., Koester, P., Gouzoulis-Mayfrank, E. and Daumann, J. (2012), A prospective study of learning, memory, and executive function in new MDMA users. Addiction. doi: 10.1111/j.1360-0443.2012.03977.x
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