日本排尿機能学会、The Korean Continence Society、The Taiwanese Continence Societyの公式英文誌 LUTS: Lower Urinary Tract Symptoms にうつ病、不安神経症と膀胱の関係を調査した総説が掲載されました。筆頭著者である、東邦大学医療センター佐倉病院の榊原隆次先生により下記ご紹介いただきましたので、是非併せてご一読ください。
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Depression, Anxiety and the Bladder
Ryuji Sakakibara, Takashi Ito, Tatsuya Yamamoto, Tomoyuki Uchiyama, Tomonori Yamanishi, Masahiko Kishi, Yohei Tsuyusaki, Fuyuki Tateno, Shuichi Katsuragawa and Nobuo Kuroki
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東邦大学医療センター佐倉病院神経内科の榊原隆次先生によるご紹介
うつ病・不安神経症は、一般人口の6-20%にみられるとされ、精神科疾患の中で非常に多いものである。うつ病・不安神経症は、情動症状のみならず、不眠、食思低下、膀胱障害などの身体症状をしばしばきたすことが知られている。
最近の精神科初診未治療うつ病患者の検討では、128名に排尿症状のアンケートを施行し対照391名と比較した結果、患者群で尿意切迫・頻尿・尿失禁(過活動膀胱 overactive bladder OAB); 排尿困難が多くみられた(25.9%)。これは、パーキンソン病の75%、脳卒中の55%と比べると少ないものの、対照群(10%)より有意に多かった。すなわち、OABの原因として、神経疾患のみならず、うつ病を含めた精神疾患が注目される。
一方、うつ病・不安神経症を含めた心因性排尿障害の機序について、最近のウロダイナミクス2300名の検討では、心因性排尿障害が16名あり(0.7%)、OAB5名、排尿困難1名、両者の合併が10名であった。特徴として1)機会依存性、2)OAB、排尿困難、排尿回数の極端な減少、3)排尿症状とウロダイナミクス所見(下記の他は正常)の解離、4)膀胱知覚過敏50%、膀胱無収縮31%がみられた。
うつ病・不安神経症患者のOABは、心理動態的に身体表現化障害と考えられる。その機序として、縫線核セロトニン系には、情動調整/亢進作用と共に、膀胱抑制作用が知られている。うつ病・不安神経症では、脳内セロトニン欠乏等により、情動症状とOABを同時に来している可能性が考えられる。これらの患者に対して、抗うつ薬が情動症状とOABの両者に有効な可能性があり、今後の研究が期待される。
連絡先:
〒285-8741 千葉県佐倉市下志津564-1
東邦大学医療センター佐倉病院
内科学神経内科准教授
榊原隆次
電話: 043-462-8811 内線2323
ファックス: 043-487-4246
メール: sakakibara@sakura.med.toho-u.ac.jp
ホームページ: http://www.lab.toho-u.ac.jp/med/sakura/neurology/
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