甲状腺乳頭癌(PTC-Papillary thyroid cancer)は内分泌悪性腫瘍の中で最も多く、ここ数十年で増加しています。甲状腺乳頭癌患者の10年生存率はほぼ9割で予後の状態はよいですが、10年で3割近くの患者が局所領域及び遠隔転移の再発を患っており、術後も長期観察が必要とされています。
この度アメリカがん協会の公式誌Cancerに発表された論文によると、再発性PTC組織において、遺伝子発現を調節する機能を持つ短鎖RNAであるmicroRNAのうち特定の2種(miR-222と miR-146b)の過剰発現が認められました。非再発性腫瘍に比べ、再発性腫瘍の組織中ではこれら2種のmicroRNAが、それぞれが10.8倍及び8.9倍の過剰発現を示すことが確認されました。これらのmicroRNAの検査によって腫瘍の切除後に再発リスクの高い患者を特定できるようになれば、より効率的で効果的な治療につながる可能性があります。
また、健常者に比べ甲状腺乳頭癌患者の血液中のmiR-222とmiR-146bの数値が高いことが確認され、手術後にこの数値が平均値まで下がったことから、現在PTC診断に用いられている血液検査の不正確さを補うためにmicroRNA血液検査が有効である可能性が示唆されました。ただし、同じ数値の上昇は良性の多結節性甲状腺腫でも見られることから、microRNA血液検査は単独でPTCの初期診断に用いるには向かないようです。
⇒ MicroRNA-222 and MicroRNA-146b are tissue and circulating biomarkers of recurrent papillary thyroid cancer
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