寒さが一段と厳しくなり、風邪にかかりやすい季節になってきました。ところで、「風邪を引いたときは、ビタミンCを多く摂るといい」とよく言われますが、これには医学的根拠があるのでしょうか、それとも単なる俗説でしょうか?
風邪に対するビタミンCの効果については、過去70年以上も議論の対象になっています。「効果あり」という説は、ノーベル化学賞・平和賞受賞者であるライナス・ポーリング(Linus Carl Pauling)博士が1970年代に「ビタミンCの大量摂取は風邪の予防・治療に効果がある」と発表したことで、一躍広く知られるようになりました。
ヘルシンキ大学のHarri Hemilä博士らは、ビタミンCサプリ摂取の風邪への効果について過去に行われたプラセボ対照による臨床試験のデータに対してメタ解析を行い、その結果を2013年1月にコクラン・レビュー(* 下注)として報告しています。
- コクラン・レビュー ⇒ Hemilä H, Chalker E. Vitamin C for preventing and treating the common cold. Cochrane Database of Systematic Reviews 2013, Issue 1. Art. No.: CD000980. DOI: 10.1002/14651858.CD000980.pub4.
(本文を読むにはアクセス権が必要ですが、概要はAbstract(抄録)として無料公開されています。”Plain language summary”は、専門用語を排し、一般読者に分かりやすく書かれた解説です。)
総計11,306人を対象にした29の臨床試験の結果に基づき、このレビューの著者らは以下のように結論しています。
- 日常的なビタミンCサプリ摂取は、風邪の予防には効果がない(摂取・非摂取者間で統計的に有意な差が認められない)が、発症後の罹病期間の短縮と症状の緩和には若干の効果が認められる
- 発症後にビタミンCを大量摂取することの治療効果については、一致した結果が得られていない
- ビタミンCサプリ摂取による副作用は報告されておらず、安全
ということで、効果の有無を明確にするには、今後さらに研究が必要となるようです。ビタミンCサプリ自体は安価で安全なものですので、風邪が心配な人が摂取して悪いことはなさそうですが、効果を過信しないように、といったところでしょうか。
* コクラン・レビューは、国際的な非営利団体The Cochrane Collaboration(コクラン共同計画)が製作する医学情報データベースThe Cochrane Libraryの中核をなす文献です。各レビューは、特定の疾病や健康上の問題に対する治療効果を取り上げ、ランダム化臨床試験の結果を要約することにより、その治療効果の有効性を判断します。
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