高齢者への短期間の認知トレーニングは、実施から10年後まで効果が持続|米国追跡調査で明らかに

Journal-of-the-American-Geriatrics-Society-cover2832名の高齢者が参加した比較臨床試験で、10回程度の認知トレーニングを受けた人は受けなかった人に比べて、10年後の認知能力が高く、長期的な効果がある旨を示唆する調査結果が米国老年医学会誌Journal of the American Geriatrics Societyで発表されました。

Ten-Year Effects of the Advanced Cognitive Training for Independent and Vital Elderly Cognitive Training Trial on Cognition and Everyday Functioning in Older Adults
George W. Rebok, Karlene Ball, et al.
*Abstract(抄録)は無料公開。全文を読むにはアクセス権が必要です

プレスリリース⇒ Brief Mental Training Sessions Have Long-Lasting Benefits for Seniors’ Cognition and Everyday Function

認知力の衰えは多くの高齢者にみられ、QOL(生活の質)に深刻な影響を及ぼす可能性があります。そこで認知トレーニングの潜在的な効果を検証するために「高齢者向け先進的認知力トレーニング(Advanced Cognitive Training for Independent and Vital Elderly-ACTIVE)」の臨床試験が行われました。当試験では、平均年齢73.6歳の参加者が、三つの介入群及びトレーニングを受けない対照群にランダムに分けられ、トレーニング実施の10年後の状況が報告されました。介入群は記憶力(単語一覧、単語の並び順、話の内容等の記憶)、問題解決力(バスの時刻表の把握や注文票等の記入等)及び処理速度(電話帳から電話番号を探す能力や運転中に遭遇する変化への反応等)のいずれかのトレーニングを5-6週間にわたり1回60-75分・計10回のセッションで行いました。その結果、記憶力は5年後までは対照群と比較して改善されていましたが、10年後に違いは見られませんでした。問題可決と処理速度の介入群については10年後も対象群に比べ、顕著な改善が確認されました。また、初期のトレーニングの11ヶ月及び35ヶ月後に追加で4回トレーニングを行った場合にも、問題解決及び処理速度の介入群はより持続性のある改善が見られました。

筆頭著者のGeorge Rebok氏(ジョンズホプキンズ大学)は「これらの発見は、日常生活に影響を及ぼし、加齢と供に最も低下する認知力に焦点を当てた介入の発展に貢献するものであり、認知力の衰えが日常生活に来し始める時期を遅らせることができる可能性がある。さらに認知低下の発症を少しでも遅らせることによって公衆衛生に大きな影響を及ぼし、医療費の上昇を下げる効果も期待される」と語っています。また、同研究チームは安全な運転能力を持続するためのトレーニング、及びトレーニングの期間を延ばすことによる効果を今後研究して行きたいとのことです。

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