音楽療法は、音楽の働きによって心身の状態の改善を図る補完的な療法です。この音楽療法には、がん治療中の青少年が病に立ち向かう力を高める効果があることを示す調査結果が、アメリカがん協会の公式誌Cancerで報告されました。
青少年のがん患者らは、治療に伴う苦痛に対して心理的な防衛反応を長期間続けるため、それによって社会や家族との関係が悪化し、治療への適応力を削ぐことが起こりがちです。従って、彼らのがん治療への適応力を高めるには、効果的な対処戦略と心理社会的サポートが重要になってきます。今回の調査では、高いレベルの苦痛を伴う造血幹細胞移植治療を受けた青少年患者を対象に、音楽療法の効果を確認しました。
⇒ Randomized clinical trial of therapeutic music video intervention for resilience outcomes in adolescents/young adults undergoing hematopoietic stem cell transplant: A report from the Children’s Oncology Group
Sheri L. Robb, Debra S. Burns, Kristin A. Stegenga, et al.
*Abstract(抄録)は無料公開。全文を読むにはアクセス権が必要です
研究者らは、がん患者が本来であれば話さなかった思いや感情の探求及び表現を促すような音楽療法を設計し、音楽療法士の指導のもと、歌詞を書いたり、ビデオの制作体験を通して、自らの経験を振り返り、自分にとって何が大切なのかを気づくための手助けとなる音楽療法を行いました。録音、ビデオイメージの収集、絵コンテ作り等の過程を通して患者に家族・友人・医療提供者と関わる機会を作り、コミュニケーションを活発にし、治療中にその大切な関係を保たせることを目的としました。
調査には造血幹細胞移植を受けている11歳から24歳のがん患者113名が参加し、音楽療法を受けるグループと対照群に分かれました。音楽療法を受けたグループは3週間に渡り6回のセッションを行いました。音楽療法実施の100日後を確認したところ、音楽療法を受けたグループは社会及び家族との関係が飛躍的によくなり、がん治療に対するより積極的な姿勢が見られたとのことです。今後はさらに100日以降の調査及びより大規模な試験の評価が必要と研究者らは締めくくっています。
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