東日本大震災を経験した児童の睡眠習慣は被災後20ヶ月を経ても影響を受けているとの調査報告

Changes in traumatic symptoms and sleep habits among junior high school students after the Great East Japan Earthquake and Tsunami日本睡眠学会の公式英文誌であるSleep and Biological Rhythmsより、東日本大震災で被災した児童のトラウマ症状と睡眠習慣の中長期的な経過を外傷体験の有無から調査した論文が出版されました。筆頭著者である、国府台病院 児童精神科の岩垂喜貴先生により和文抄録をご提供いただきましたので、全文と供に是非ご一読ください。

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Changes in traumatic symptoms and sleep habits among junior high school students after the Great East Japan Earthquake and Tsunami
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Yoshitaka Iwadare, Masahide Usami, Hirokage Ushijima, Tetsuya Tanaka, Kyota Watanabe, Masaki Kodaira, Maiko Harada, Hiromi Tanaka, Yoshinori Sasaki and Kazuhiko Saito

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国府台病院 児童精神科 岩垂喜貴先生による和文抄録

 平成23年3月11日に生じた東日本関東大震災は岩手、宮城、福島の東北三県を中心に多くの被害をもたらした。独立行政法人国立国際医療研究センター国府台病院は震災直後より宮城県の要請を受け、震災直後から宮城県石巻市内で心のケア診療活動を行っている。石巻市は宮城県東部に位置する宮城県内第2の都市である。当市は市内が沿岸部に位置するため本震災での被害も甚大であった。市内の被災した子ども達の多くは重篤な外傷体験をもち、精神面でのフォローアップ体制作りが急務となっている。そのため震災から約半年が経過したH23年11月より、その実態を石巻市教育委員会と共に調査することになった。本研究の目的は被災地における児童の睡眠習慣とトラウマ症状の中長期的な経過を外傷体験の有無から調査することである。

 対象は宮城県石巻市立に在籍する中学生(被災後20ヶ月の時点で中学2年生および3年生)。該当する児童に対して子ども版災害後ストレス反応尺度(PTSSC-15)および、睡眠習慣を被災後8ヶ月、20ヶ月にそれぞれ実施した。①自宅被害 ②離別体験 ③避難経験と言った外傷体験の有無でまた前述した項目について比較を行った。尚本研究は独立行政法人国立国際医療研究センター倫理委員会の承認を得ている。

 調査用紙の回収率は88.2%、有効回答率は67.7%(N=1919)であった。結果は以下に示す通りである。

①. 被災後8ヶ月後調査と比較して被災後20ヶ月後調査では睡眠時間の短縮化( p< 0.001 )、睡眠相の後退( p < 0.001 )を認めた。また「休日と平日の睡眠時間の差」が増大する傾向にあった( p<0.001 ).PTSSC-15の総得点と睡眠についての設問(Q1)では有意な差を認めなかった。
②.被災による自宅被害を認めた児童は被災後8ヶ月後調査だけでなく20ヶ月後調査で平日の睡眠時間が短く睡眠覚醒リズムが後退する傾向にあった( p<0.01 )。離別体験を経験した児童は平日の睡眠時間が短かった( p < 0.05 ).PTSSC-15の総得点と睡眠についての設問(Q1)では外傷体験の有無では有意な差を認めなかった。

 被災地で外傷体験を受けた児童のトラウマ関連症状は被災後20ヶ月においてもその他の児童に対して有意な差はなかったが、睡眠習慣は被災後20ヶ月を経ても影響を受けていることが示された。

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