日本老年医学会の英文誌よりアジアにおけるサルコペニア特別号出版 【無料公開中】

Sarcopenia in Asia special issue from Geriatrics and Geronotology InternationalGeriatrics & Gerontology International (日本老年医学会の公式英文誌)からアジアにおけるサルコペニアについて16篇の論文を掲載した特別号が出版されました。Guest Editorの一人である荒井秀典先生(京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻 教授)により、下記ご紹介頂きましたので本文と併せて是非ご一読ください。

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京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻 荒井秀典先生によるご紹介

Sarcopenia in Asia特別号発刊に寄せて

1980年代後半にRosenbergが提唱したサルコペニアという言葉は、ギリシャ語のsarco、peniaというそれぞれ筋肉、減少を意味する語を組み合わせることによりできたものである。高齢者においては筋肉量の減少がある一定レベル以上に進行すると、転倒、要介護状態、死亡などのリスクが高まるとともに、歩行速度、握力など筋力に基づく機能低下が、生命予後に関係するといわれており、高齢化が進む各国においてはサルコペニアへの認識が高まりつつある。サルコペニアの診断に関して、ヨーロッパの研究者を中心としたグループ及びアメリカの研究者を中心としたグループにより、その診断基準が提唱されたが、欧米人の基準がアジア人にそのまま適用できるかどうかについても明らかではないため、アジア人においては独自の診断基準が必要ではないかという気運が高まった。そのため、日本、韓国、中国、台湾、香港、タイ、マレーシアからサルコペニアの研究者が一堂に会して、台北で2013年3月最初の会議が開催された。その会議では各国からサルコペニアに関する研究報告がなされたが、引き続きサルコペニアに関する研究の発信を行うため、研究グループの名称をAsian Working Group for Sarcopenia(AWGS)とすることが決まった。 その後、2回目のAWGS会議は6月にソウルで、3回目は11月に京都で行われ、AWGSによるアジア人のための診断基準が提唱された。我々の診断基準においては、ヨーロッパの基準同様に握力・歩行速度いずれかの低下を有し、筋肉量の減少が認められる場合にサルコペニアと診断することとした。しかしながら、欧米人とは体格や生活習慣も異なり、筋力や筋肉量に違いがあることが明らかになり、握力と筋肉量についてはアジア人独自の基準を定めた。今後はこの診断基準を用いたアウトカム研究が待たれる。それにより診断基準の見直しも考慮することになろう。

サルコペニアに関する研究が始まってから20年余りであるが、その病態、疫学、治療などについてアジア人でのさらなるエビデンスの構築が必要である。本特別号においてはサルコペニアに関する研究で活躍中の研究者により、16篇もの論文が報告されている。本特別号を受けてアジアにおけるサルコペニア研究がさらに加速することを期待したい。

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