The Journal of Dermatology (日本皮膚科学会の公式英文誌)からアジアに特有の皮膚リンパ腫について12篇の論文・会議録を掲載した特別号が出版されました。Guest Editorである岩月啓氏先生(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科皮膚科学分野 教授)により、下記ご紹介頂きましたので本文と併せて是非ご一読ください。
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岡山大学大学院医歯薬学総合研究科皮膚科学分野 岩月啓氏先生によるご紹介
リンパ腫の病型は、2008年のWHO分類でコンセンサスが得られ、広く診断に用いられている。その中で、HTLV-1感染による成人T細胞白血病・リンパ腫(ATLL)と、EBウイルス感染によって発症する節外性NK/T細胞リンパ腫(鼻型)は(ENKL)、アジアが好発地域である。これらのリンパ腫は、欧米では発症がきわめてまれで、散発的であるため、その正確なデータをアジアから情報発信することはわれわれの責務ともいえる。
本号では、Hamada らが2007年から2011年の5年間毎年続けてきた全国調査結果、1733例の皮膚リンパ腫症例の発症頻度を欧米と比較して報告した。菌状息肉症・セザリー症候群は全体の約45%を占め、最も発症頻度が高いのは欧米と同じであった。MiyagakiとSugayaは、菌状息肉症・セザリー症候群の腫瘍化に関わる微小環境としての皮膚について解説を加えた。
日本、韓国を含めたアジアに多い、EBウイルス関連T/NK細胞リンパ腫のプロトタイプがENKLであるが、そのほかにも多彩な病型が存在する。韓国のParkとKoは、病理学者の立場で、ENKLの臨床病理所見についてのレヴューしている。2013年8月の第29回日本皮膚悪性腫瘍学会では、韓国からKo先生と我が国の著名な病理学者をお招きして、EBウイルス関連T/NK細胞リンパ腫のうち、高齢者に発症した症例をまとめてCPCを開催し、臨床的および病理的特徴について意見交換した。本号ではその会議録を掲載した。
ATLLはわが国では、皮膚リンパ腫のち未分化大細胞リンパ腫を同じくらいの頻度で発症するが、隣国の韓国や中国での発症は極めて少ない。Tokura らは、ATLLの皮膚病変と予後の関連について解説を加えた。2013年7月には、厚労省研究班(塚崎班)により、皮膚病変だけを有するATLL症例を集積したCPCが開催された。血液内科、病理医、皮膚科医による意見交換がなされ、その内容を会議録として掲載した。
皮膚リンパ腫ガイドラインは、日本皮膚科学会と日本皮膚悪性腫瘍学会の共同事業として2009年に公開され、2011年に改訂された。2013年には英訳版が本誌に掲載されたが、その間に、いくつかの新薬が登場し、治験が進められている。診療ガイドラインを補完する目的で、現在、開発中の薬剤を紹介した。かつて菌状息肉症・セザリー症候群に保険適用のあったインターフェロンγの治験成績を本号に掲載した。インターフェロンγが診療の場に戻ってくる日が近づいた。本号のテーマに関連した原著論文や、症例報告を掲載したので合わせてご一読いただきたい。
2014年2月吉日
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