東日本大震災による福島の原子力災害が及ぼした精神疾患への影響

Mental disorders that exacerbated due to the Fukushima disaster a complex radioactive contamination disaster日本精神神経学会の公式英文誌であるPsychiatry and Clinical Neurosciencesより、東日本大震災による福島の原子力災害が及ぼした精神疾患への影響を報告した論文が出版されました。筆頭著者である、福島県立医科大学大学の松本純弥先生により論文のご紹介をいただきましたので、全文と供に是非ご一読ください。

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 ⇒Mental disorders that exacerbated due to the Fukushima disaster, a complex radioactive contamination disaster

Junya Matsumoto, Yasuto Kunii, Akira Wada, Hirobumi Mashiko, Hirooki Yabe and Shin-ichi Niwa

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福島県立医科大学 松本純弥先生によるご紹介

 2011年3月11日に発生した東日本大震災とそれに伴う大津波は、東京電力福島第一原子力発電所のメルトダウンに至る事故を引き起こし、長期的に放射性物質飛散が継続する未曾有の原子力災害を引き起こした。福島県民は地震、津波で甚大な被害を受けただけではなく、一連の福島第一原子力発電所事故に伴う持続的な放射性物質の漏出により、現在も著しい不安と恐怖に曝され続けている。このような状況下において、精神疾患を抱えた患者の精神症状はどのような影響を受けたのかを調査報告することは、極めて重要であると考えられる。

 本論文では、福島第一原子力発電所から約60kmの位置にある福島県立医科大学付属病院の精神科外来の再来通院患者を調査している。同院は、福島県内で唯一の医学部のある大学の大学病院である。地震が発生した3月11日から1か月間の再来通院患者の診療録を後方視的に調査し、疾患ごとに病状の変化を評価することによって、どのような精神疾患にどのような影響が出るのかを検討し、今後の災害精神医学への提言を行っている。

 結果としては、双極Ⅰ型障害での躁転が特徴的となっている。激しい躁病エピソードを呈する患者は、家族や周囲の地域コミュニティへの影響が大きいため、災害の二次被害を惹起するリスクが高まる。また、入院に至っても、躁病エピソードでは対応するスタッフのエネルギーも多大に消費し、ライフラインがストップし混乱を極める災害時の病院においては、他の入院患者の相対的なケア不足を招きかねない。双極Ⅰ型障害の症状を注意深く観察し悪化を防ぐことが、災害状況下において特に重要と考えられた研究成果であった。

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