外国語を学ぶと老後の認知機能の低下を防ぐ効果があるという説は、これまで確実な裏付けが得られていませんでしたが、このほどその有力な証拠と見られる研究結果が発表されました。英エディンバラ大学の研究グループは、1947年に11歳で知能検査を受けた人々を対象に、70代となった約60年後に再検査を実施した結果、外国語をひとつ以上習得した人は加齢による認知能力低下の度合いが小さいことを確かめました。この結果を報告した論文は、American Neurological Association(アメリカ神経学会)とChild Neurology Society(米国小児神経学会)の公式誌 Annals of Neurology でオープンアクセスで公開されました。
- 論文 ⇒ Bak, T. H., Nissan, J. J., Allerhand, M. M. and Deary, I. J. (2014), Does bilingualism influence cognitive aging? Ann Neurol.. doi: 10.1002/ana.24158 (オープンアクセス)
同グループは、1936年にエディンバラで生まれ11歳時に知能検査を受けた853人を対象として、彼らが70代前半となった2008~2010年に再検査を行いました。853人全員が英語を母国語とし、そのうち262人がこれまでに少なくとも一つの外国語を習得したと回答しました。認知能力を示すスコアの変化を分析した結果、外国語習得者は、11歳時の知能の違いを調整してもなお、非習得者よりも有意に高い認知能力を示し、加齢による認知機能低下の度合いが小さいことが分かりました。この違いは外国語の習得時期が18歳以前・以後のどちらのグループにも見られ、特に一般的認知とリーディング能力で非習得者との差が顕著でした。
外国語を習得した高齢者の認知機能が高いことを示す研究結果はこれまでにもありましたが、外国語学習の結果として認知機能が高まったのか、逆にもともと知能の高い人のほうが外国語を身に付けやすいだけなのかを区別することができませんでした。今回の報告は、約60年も前の知能検査結果を入手することによって児童期の知能の違いを排除することに初めて成功した貴重なもので、外国語学習が認知機能低下を防ぐ効果についての有力な裏付けといえそうです。
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