このたび、Journal of Clinical Pharmacologyに、日本における医薬品の承認申請に適応される国際共同試験とアジア試験戦略を比較した論文が掲載されました。共同著者のお一人である横浜薬科大学の千葉康司先生より論文のご紹介をいただきましたので、本文と供に是非ご一読ください。なお、当論文は今月のEditor’s Choiceにも選ばれています。
⇒Comparison of Global Versus Asian Clinical Trial Strategies Supportive of Registration of Drugs in Japan
*Abstract(抄録)は無料公開。全文を読むにはアクセス権が必要です
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横浜薬科大学 千葉 康司先生によるご紹介
近年、医薬品の臨床開発では、臨床試験に参加する被験者を短期間に集めるために日本だけでなく世界各地の試験施設で実施するようになった(国際共同治験)。興味深いことに、日本人と遺伝子が類似する中国人や韓国人が参加するアジア地域の国際共同治験(アジア試験)の数が急増している。本研究では、このアジア試験の位置づけを調査するため、日米欧同時申請の有無、症例数、全集団と日本人集団での結果における一貫性の有無、民族差の有無等のデータを収集し、アジア試験の特徴を整理した結果、新たな徴候が見いだされた。
アジア試験の特徴を調査するために、アジア試験以外の国際共同治験(worldwide試験)と比較したところ、アジア試験では、29%が日米欧同時申請のデータとして用いられ、worldwide試験では83%とより多く使用されていた。また、アジア試験はworldwide試験より小規模で実施されていることも分かった。さらに、アジア試験の日本人症例数の割合はworldwide試験より高かった。一方で、国際共同治験の複数の民族の中で日本人集団のみを取り出し、有効性エンドポイントについて、対照群に対し有意な差が得られた試験を調査したところ、その割合は、アジア試験の方がworldwide試験より多かった。アジア試験では日本人集団での有意な結果が求められていると示唆された。また、日本での開発開始時に既に欧米で承認あるいは欧米での第3相試験が未計画の場合には多くのケースにおいて、アジア試験が実施されていた。
結論として、アジア試験は、日本人と白人との民族差により用量の変更が必要となる可能性のある医薬品、グローバル試験に参加する機会を逸した医薬品、欧米での臨床試験が計画されていない医薬品に適応される戦略と考えられた。一方、worldwide試験は、世界同時申請を目的とする医薬品、有効性等に民族差の影響がない医薬品、既に他の疾患で承認され日本人データが収集されている医薬品の効能追加等を目的として実施される臨床試験に適応される戦略と考えられた。
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