Wileyは7月8日、各論文がTwitterなどのソーシャルメディア上で示した影響度(インパクト)を数値化する指標「Altmetric(オルトメトリック)データ」の提供を、全てのジャーナルで開始しました。
学術論文の影響度を示す指標としては、「被引用回数」が一般的に使われていますが、被引用回数には、論文の発表からデータが得られるまでのタイムラグが長いといった難点もあります。近年、それを補完するために、ソーシャルメディア上での言及回数などを用いる指標altmetrics(オルトメトリクス、”alternative metrics”からの造語)への注目が高まっています。altmetricsデータの提供元は複数ありますが、それらの中でWileyは、Altmetric社のデータを採用しました。Altmetric社は、論文についてのTwitterやFacebook、ブログ、ニュースサイトなどでの言及や、Mendeleyへの登録者数に基づいて数値指標(Altmetricスコア)を算出しています。
Wileyは昨年来、一部の化学・材料科学ジャーナルやオープンアクセス誌でAltmetricデータの試験提供を行ってきました。その中で行われた調査では、「Altmetricデータは論文の価値を高める」と回答した利用者が77%にのぼるなど、Altmetricデータに対して高い評価が示されました。その結果を受けて、WileyはAltmetricデータの提供を全ジャーナルへと拡張することにしました。
Altmetricデータの見方
Wiley Online Library上の論文ページには、その論文のAltmetricスコアを示す「Altmetricバッジ」が表示されます。(下図)
Altmetricバッジをクリックすると、スコアの内訳と個々の言及の詳細をカテゴリー別に見ることができます。
なお、「被引用回数とAltmetricデータの、どちらを影響度指標として見るべきか」などと二者択一的に考えるのは早計でしょう。二つの指標を、論文が持つインパクトの異なる側面を示すものとして補完的に用いることで、論文に対して多角的な視点が得られるようになることをWileyでは期待しています。(Wiley Online Libraryには、論文の被引用状況が分かる「Cited By」機能もあります。→ 参考記事)
影響度指標と聞くと敷居が高く感じられるかもしれませんが、Altmetricデータは日常的に論文を読む際にも役立ちそうです。Altmetricスコアを見ることで、その論文に対する反響の大きさがリアルタイムで分かるのに加えて、Altmetricバッジからリンクを辿って他の読者のツイートやブログ記事を読むことで、その論文に対する新しい見方を学べるかもしれません。Wileyのジャーナルで興味を引く論文を見つけたら、まずAltmetricスコアを見る、またバッジをクリックして他の読者の反応を見るということを試してみてはいかがでしょうか。
参考リンク (英語)
- Wileyのプレスリリース (July 8, 2014)
- Wiley Exchangesブログの解説記事 Altmetric is now on board for all Wiley journals (July 8, 2014)
- AltmetricデータについてのFAQ
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