International Society on Thrombosis and Haemostasis(国際血栓止血学会)が「世界血栓症デー(WTD)」と定めた10月13日を前に、静脈血栓塞栓症(VTE)の世界的疾病負担を分析した論文が、同学会の公式論文誌Journal of Thrombosis and Haemostasis(右表紙)に掲載されました。米オクラホマ大学公衆衛生学部長のGary E. Raskob教授を中心とするWTD運営委員会が、過去に発表された文献を基にデータ分析を行いまとめた今回の論文は、VTEに関するこの種の報告としてはこれまでで最も包括的なものです。
- 論文 ⇒ ISTH Steering Committee for World Thrombosis Day. Thrombosis: a major contributor to the global disease burden. J Thromb Haemost 2014; 12: 1580–90. (オープンアクセス)
WHOなどによる「2010年の世界の疾病負担研究」(Global Burden of Diseases 2010 = GBD 2010)では、VTEによる死亡・障害についてのデータは報告されていません。それを補う目的でまとめられた今回の論文は、VTEの発症率、発症の原因、患者の年齢や各国の所得水準との関係、疾患によって失われた年数を示す「障害調整生命年」(DALY)などを分析しています。
この論文によると、VTEは国の所得水準を問わず疾病負担の主要な原因のひとつになっています。特に院内肺炎やカテーテル由来血流感染、薬の副作用など院内発症の疾患に限って見ると、低・中所得国ではVTEがDALYの最大原因となっていて、高所得国でも2番目の原因となっています。今回の報告は、今後の保健政策の基礎となるデータを提供するものとして注目され、同時に今回の分析をさらに発展させるためのデータの集積が期待されます。
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