このたび、International Nursing Reviewに、介護老人保健施設における日本のナースプラクティショナーの実践と成果を報告した論文が掲載されました。ナース・プラクティショナーとは修士レベルで医師との協働により診断・治療・処方などができる米国の上級看護師資格の一つです。
共同著者のお一人である大分県立看護科学大学の宮内信治先生より論文のご紹介をいただきましたので、本文と供に是非ご一読ください。
⇒Japanese nurse practitioner practice and outcomes in a nursing home(オープンアクセス)
M. Ono, S. Miyauchi, Y. Edzuki, K. Saiki, H. Fukuda, M. Tonai, J.K. Magilvy and S. Murashima
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大分県立看護科学大学 宮内信治先生によるご紹介
1大分県立看護科学大学、2コロラド大学看護学部名誉教授
日本でのナースプラクティショナーの養成教育は、2008年に大分県立看護科学大学で初めて開始され、2010年から教育を受けた修了生が活動を始めた。国は、2014年に「特定行為に係る研修制度」を正式に制度化することを決め、医師の手順書をもとに41の特定行為を行うことができる看護師の活動が始まる。
このケーススタディは、すでに国の試行的事業の中で活動を開始した介護老人保健施設のナースプラクティショナーの活動に焦点をあてたものである。ナースプラクティショナーの介護老人保健施設での実践を紹介し、介入前後の入所者比較から活動成果を報告する。
ケースは、人口80、000人、高齢化率32.4%の日本の南部地域に立地する68床とショートステイ23床を有する介護老人保健施設である。ナースプラクティショナーは教育前から同施設で看護師として活動していた。教育後の実践では、全入所者に医療面接やフィジカルアセスメントを実施し、病態悪化などの必要時に医師の手順書をもとづいて検査を実施し、軽微な症状への薬剤選択・使用などの活動を行っている。
活動成果として、ナースプラクティショナーの介入前2年間(2009年4月~2011年3月)と介入後2年間(2011年4月~2013年3月)について、入所者の入院率と救急搬送率を比較した。その結果、入院率は介入前の119件(45.8%)から介入後は66件(30.1%)と有意に減少し(p<0.01)、救急搬送率は介入前19件(7.3%)から介入後5件(2.3%)と半減していた(p<0.01)。入院原因となった症状・疾患については胸痛が介入前より介入後が有意に減少していた(P<0.05)。
この結果は、医師や他のスタッフとの協力体制にナースプラクティショナーが補強されたことにより、高齢者の日々の健康管理体制が充実し、入所者の救急搬送と入院を要するような悪化を予防していること、異常時の救急搬送の必要性の判断も的確に行っていることなどが考えられる。
ナースプラクティショナーの介護老人保健施設への導入は、高齢社会における日本において重要な成果をもたらすことが示唆され、今後の積極的な導入が期待される。
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