喫煙男性の多い中国でがん罹患リスクが深刻化 / 約50万人を対象とした大規模調査で明らかに(Cancer誌)

Credit - f-f-f-f/Shutterstock

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多くの先進国では、たばこへの規制強化により喫煙者が減る傾向にあり、肺がんなど喫煙を原因とするがんによる死亡数も着実に減少に向かっています。その一方で、近年の経済成長により生活水準が向上した中国では、男性の高い喫煙率を反映してたばこの消費が拡大しており、世界のたばこ生産・消費全体の約40%を中国が占めるに至っています。そのため中国の男性の間では喫煙を原因とするがんが多数発生し、がんのリスクは今後数十年の間にさらに高まるおそれがあると警鐘を鳴らす研究結果が報告されました。

この研究を行ったのは、英オックスフォード大のZhengming Chen教授と中国医学科学院のLiming Li教授をリーダーとするグループです。同グループは、2004~2008年の間に中国の10の地域で30~79歳の成人約50万人を対象にして、喫煙とがん罹患との関係を調べるための大規模調査 “China Kadoorie Biobank” を実施し、その後7年間の追跡調査で約1万8千件のがん罹患を確認しました。

調査対象者のうち男性の喫煙率は68%、女性では3%と男女間で大きな開きが見られるとともに、喫煙男性は非喫煙男性よりもがん罹患リスクが44%高いことが分かりました。また喫煙を原因とするがんは、40~79歳のがん罹患全体のうち23%に相当すると推定され、特に肺・肝臓・胃・食道のがんで高いリスクをもたらしています。

さらに中国全体では、喫煙を原因とするがん罹患は年間435,000件に達し、うち360,000件は男性で発症していると推定されました。たばこ消費の増加ががん罹患数の増加として現れるまでにはタイムラグがあるため、喫煙者に禁煙を促す大規模な措置が採られない限り、今後数十年間に男性のがんリスクは現在よりも大幅に高まることがが懸念されると同グループは警告しています。また、女性の喫煙率が現在のまま低い水準で推移すれば、たばこは近い将来、中国人の平均寿命の男女差をもたらす最大の要因となる可能性があることも指摘されています。

この研究結果をまとめた論文は、アメリカがん協会の論文誌Cancerがこのほど発行した “Lung Cancer in China”(中国における肺がん)特集号に掲載されました。

Cancer

  •  論文  Chen, Z.-M., Peto, R., Iona, A., Guo, Y., Chen, Y.-P., Bian, Z., Yang, L., Zhang, W.-Y., Lu, F., Chen, J.-S., Collins, R., Li, L.-M. and for the China Kadoorie Biobank Collaborative Group (2015), Emerging tobacco-related cancer risks in China: A nationwide, prospective study of 0.5 million adults. Cancer, 121: 3097–3106. doi: 10.1002/cncr.29560 Open access(オープンアクセス)
  • 発表資料: Men in China Face Increasing Tobacco-Related Cancer Risks (September 2, 2015)
  • この論文が掲載されたCancer誌「中国における肺がん」特集号の目次: Special Issue: Lung Cancer in China (September 1, 2015)

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  • カテゴリー: 腫瘍学   パーマリンク

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