東日本大震災の発生以後、医療救護拠点の整備やライフライン確保を含めた地域的な防災体制づくりの取り組みが、全国各地で進められています。地震とそれに伴う津波がわが国にとって大きな脅威であることは言うまでもありませんが、そのほかにも地下鉄サリン事件のような都市テロや化学工場の爆発事故など、地域が備えなければならないリスクは数多くあります。そのようなリスク要因に対する防災対策の参考に役立つ一冊が出版されました。
Local Planning for Terror and Disaster: From Bioterrorism to Earthquakes
Leonard A. Cole, Nancy D. Connell
ISBN: 978-1-1181-1286-1
Paperback / 274 pages
September 2012, Wiley-Blackwell
US $99.95
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救急医療とバイオテロ対策の著名な専門家の共著による本書は、世界各国で起きた多くの実例から教訓を引き出し、さまざまなリスク要因に対して地域に求められる備えを分かりやすく解説します。例えば第1章では、2005年7月にロンドンで発生した同時爆破テロを例に採り、当日の救急・消防本部などの動きを細かく検証します。市内のタビストック・スクエアで起きたバス爆破の通報を受けた救急本部は、混乱の中で別の地区に救急車を送ってしまい、渋滞のせいもあって現場への到着に1時間もかかってしまったことが指摘されます。一方で、たまたま現場近くにいた医師や一般の通行人が救助活動に果たした役割も取り上げています。
このように、本書は救急医療に関する記述に比較的多くのページを割きながらも、緊急時の通信・連絡体制のあり方や一般住民・ボランティアの役割にも目を配り、災害やテロに対して地域が備えるべき総合的な対策を示しています。医療や地域行政に関わる多くの方にお勧めします。
本書の目次
PART I INTRODUCTION: THE KNOWN AND THE UNKNOWN
1 Preparedness, Uncertainty, and Terror Medicine 3
2 Bioterrorism and the Communication of Uncertainty 17
3 Responding to Disaster and Terrorism: The Central Role of Communication 29
PART II HEALTHCARE PROFESSIONALS
4 The Role of the Emergency Physician 47
5 The Role of the Nurse 61
6 The Role of the Dentist 71
7 The Role of the Emergency Medical Technician 83
8 The Role of the Mental Health Professional 95
PART III INSTITUTIONAL MANAGEMENT
9 The Role of the Manager of Mass Casualty and Disaster Events 111
10 The Role of Public Health 123
11 The Role of the Hospital Receiver 139
12 Managing Traumatic Stress 153
PART IV SUPPORT AND SECURITY
13 The Role of the On-Scene Bystander and Survivor 165
14 The Role of the Trained Volunteer 177
15 Bioterrorism, Biosecurity, and the Laboratory 189
16 The Role of the Law Enforcement Officer 201
17 A Model Case of Counterterrorism: Thwarting a Subway Bombing 215
18 The Newest Security Threat: Cyber-Conflict 227
PART V CONCLUSION
19 Preparedness, Black Swans, and Salient Themes 241
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