<論文紹介> カチオン性イリジウム錯体による光水素発生|東京大・村田滋教授らの成果をChemistry Viewsが報じる

太陽光によって水を分解して水素を製造する「光水素発生」は、クリーンで無尽蔵なエネルギー源として注目され、各国で活発な研究が行われています。しかし従来の方法では水素製造の効率が悪く、実用化に向けては太陽光エネルギーの変換効率の改善が課題となっていました。

光水素発生において太陽光を吸収して反応を助けるための増感剤として、カチオン性イリジウム錯体を用いる研究には多くの例がありますが、可視光捕集能の低さがネックとなってきました。東京大学大学院総合文化研究科の村田 滋教授、滝沢 進也助教らによる研究グループは、クマリンとジイミンを配位子とする新規なカチオン性イリジウム錯体を開発し、可視光捕集能を大幅に向上させることに成功しました。この錯体は、光の吸収の程度を示すモル吸光係数において、波長483nmで129000 m–1cm–1というイリジウム錯体としてこれまでにない大きな値を達成し、また触媒回転数(TON)は最高で1500と高い値を示しました。光水素発生の実用化に向けての重要なステップとなることが期待されます。

この研究成果について、化学ニュースサイトChemistry Viewsが本日31日付の解説記事で伝えています。
 ⇒ Chemistry Views - Hydrogen Generation with Visible Light

この研究成果を報告する論文は、European Journal of Inorganic Chemistry誌で発表され、現在Early Viewとしてオンラインで先行公開されています。(本文を読むにはアクセス権が必要です)
 ⇒ Takizawa, S.-y., Pérez-Bolívar, C., Anzenbacher, P. and Murata, S. (2012), Cationic Iridium Complexes Coordinated with Coumarin Dyes – Sensitizers for Visible-Light-Driven Hydrogen Generation. Eur. J. Inorg. Chem.. doi: 10.1002/ejic.201200474

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