環境中の毒物や、テロに使われる爆発物を超微量のレベルで検出できる技術へのニーズが高まっています。このほどインド工科大学マドラス校の研究グループは、1 ppt(1兆分の1)という超低濃度でTNT火薬の存在を検出し、発光する「花」の色が変わることで視覚的に示すナノセンサー技術を開発、Angewandte Chemie International Editionに発表しました。
⇒ Mathew, A., Sajanlal, P. R. and Pradeep, T. (2012), Selective Visual Detection of TNT at the Sub-Zeptomole Level . Angew. Chem. Int. Ed.. doi: 10.1002/anie.201203810
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同グループが用いたのは、金の粒子を花のような形に成形した大きさ4 µmの「メソフラワー」で、その表面を標準タンパク質であるBSA(牛血清アルブミン)と結合した銀クラスターで覆いました。銀クラスターは、ある波長の光を当てると赤色蛍光を発します。しかし、TNT火薬が存在するとBSAと反応してマイゼンハイマー錯体が生成し、赤色の発光を妨げます。赤色蛍光は、TNT濃度1 ppb(10億分の1)で完全に消え、1 ppt(1兆分の1)でも顕著に減じるほど敏感な反応を示します。赤色蛍光が消えると、予め仕込んでおいた緑色の色素が代わりに蛍光を発し、「花」の発光色が赤から緑に変わります。この変化は、蛍光顕微鏡で観察可能です。
同グループは、同じ技術を使って、微量の水銀を検出することにも成功しており、今後様々な用途への応用が期待されます。
この研究成果は、化学ニュースサイトChemistry Viewsで紹介されています。
⇒ Chemistry Views - Glowing Flowers for Ultra-Trace Analysis of TNT