雑誌のインパクトファクターと、収載論文の被引用回数との相関は低下の傾向|カナダの研究グループが報告

雑誌のインパクトファクター(IF)と、その雑誌に収載された個々の論文が出版後2年間に引用された回数との相関は、1990年前後を境に低下し続けていることを、ケベック大学モントリオール校の研究グループが米国情報科学技術協会の公式誌Journal of the American Society for Information Science and Technologyで報告しました。
 ⇒ Lozano, G. A., Larivière, V. and Gingras, Y. (2012), The weakening relationship between the impact factor and papers’ citations in the digital age. J. Am. Soc. Inf. Sci.. doi: 10.1002/asi.22731
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同グループは、論文の引用データが入手可能な1900年まで遡って、各年の雑誌のIFと、そこに載った論文の2年間の被引用回数との相関が、年によってどのように変化したか傾向を調べました。その結果、分野によって多少程度の差はありますが、1990年以降は両者の相関が低下してきていることが確認されました。

また、引用回数が上位10%以内にランクされた高被引用論文がどの雑誌で出版されたかを調べたところ、IFが上位10%に入っていない雑誌で出版された論文の割合が増えており(1990年 52% → 2009年 56%)、その傾向は上位5%の論文・雑誌で見た場合さらに強まっていました(1990年 55% → 2009年 62%)。

著者らは、この傾向を1990年頃に始まった学術雑誌の電子化と関連付けており、かつては製本された雑誌に縛られて論文を読んでいた読者が、電子化によって個々の論文自体の価値に応じて自由に読み、引用できるようになったためと示唆していますが、その因果関係までが今回のデータで立証されたわけではなく、今後の研究が待たれます。ただ、「高IFの雑誌に載ったから価値のある論文」とみなして、研究者の業績評価にまで直結させる傾向に警鐘を鳴らす報告と言えそうです。

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