Wileyから本をお出しいただく著者・編者には、日本人研究者の方々も数多くいらっしゃいます。当ブログでは、そういった著者・編者の方々に自著を語っていただく、シリーズ記事を開始することにしました。(不定期掲載)
この第1回では、秋葉 欣哉先生(広島大学名誉教授・早稲田大学理工学研究所招聘研究員)に、8月上旬に刊行されるご著書 Organo Main Group Chemistry をご紹介いただきます。
Organo Main Group Chemistry
Kin-ya Akiba
ISBN: 978-0-470-45033-8
Paperback / 288 pages / August 2011
価格 US$79.95
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本書は、全ての典型元素の有機化合物に関する重要な基本的事項を、炭素化合物と対比して、簡潔にまとめた、国際的にも最初の成書である。有機化学の一般的な講義を受けた学部および大学院初年度の学生さんと、それらの人たちを指導する教官や企業の研究者向けに書かれたものである。本書は12章と10個のノートからなる約280頁のコンパクトなもので、その内容は、各章のタイトルに記す通りである。
1章:典型元素とヘテロ原子―範囲と特徴;2章:典型元素効果;3章:リチウム・マグネシウム・銅の化合物;4章:ホウ素とアルミニウムの化合物;5章:ケイ素・スズ・鉛の化合物;6章:リン・アンチモン・ビスマスの化合物;7章:硫黄・セレン・テルルの化合物;8章:有機ハロゲン化合物―フッ素とヨウ素の化合物;9章:アトランと渡環相互作用―超原子価結合の形成;10章:高周期典型元素の不飽和化合物;11章:リガンドカップリング反応;12章:超原子価炭素化合物―6価の炭素は存在するか?
ノートは本章を補完するもので、基礎的な知識と関連する分野の近年の研究を説明している。
これらは、有機超原子価化合物が第3周期以降の典型元素に一般的に安定に存在し、新規な反応性を示すものであることを、実験的に示そうと試みた広島大学における20年間の努力を基盤として、各元素の特徴を学び、まとめたものである。
本書は、John Wiley & Sons, Incから、「有機典型元素化学」(講談社、2008年3月)の英語版(改定・増補による)の出版に関する評価の依頼を受けた3人の欧米のreviewersの、秋葉教授は[Chemistry of Hypervalent Compounds](Wiley-VCH, 1999年)の編著者であり、本書は有機典型元素化合物全般に関する国際的にも初めてのコンパクトですぐれた成書であるという、心強く暖かい推薦によって実現したものである。
我が国では、科学のいろいろな分野で、すぐれた論文・総説・書物が数えきれないほど出版されている。これらは、international journalのoriginal research paperには引用できないあるいは引用されていないことを、誠に残念に思っている人たちは多いであろう。 今後、日本語で書かれた科学的な書物などが、ますます英訳されることを、心から期待するところである。