悪質業者がニセの薬を正規の製品と偽って販売する「偽造医薬品」(counterfeit pharmaceuticals)は、世界各国で深刻な問題となっています。ネット通販やブラックマーケットを通じてこのような偽造薬を購入した消費者が健康被害に遭う例も増え、製薬メーカーは対策を急いでいます。
対策としては、正規の製品であることを示すタグを付けるのが一般的なやり方ですが、薬のパッケージに刷り込むだけでは、中身を入れ替えられてしまう可能性があるので不十分です。薬自体が真正のものだと確認できるようにするのがon-dose-authentication (ODA)という技術で、現在有力な方法とされているのは、薬のカプセルなどの中に、マイクロタガント(microtaggant)と呼ばれる識別用のマーカーとなる人体無害な微粒子を加えるものです。
マイクロタガントに製造業者・製品名・製造ロット番号などの情報を書き込む方法としては、これまで文字やバーコードが使われてきましたが、盛り込める情報量が少ない、またコードが損傷して読めなくなるなどの問題がありました。このほど韓国ソウル国立大学の研究グループは、高分子材料と蛍光モノマーを使って、QRコードを埋め込んだマイクロタガントを製造することに成功、Advanced Materials誌で報告しました(右上が表紙画像)。蛍光顕微鏡で見るとQRコードが浮かび上がり(右写真)、携帯電話などに使われているのと同じリーダーアプリで情報を読み取ることができます。
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⇒ Han, S., Bae, H. J., Kim, J., Shin, S., Choi, S.-E., Lee, S. H., Kwon, S. and Park, W. (2012), Lithographically Encoded Polymer Microtaggant Using High-Capacity and Error-Correctable QR Code for Anti-Counterfeiting of Drugs. Adv. Mater., 24: 5924–5929. doi: 10.1002/adma.201201486
QRコードは、バーコードなど従来の方法よりも格段に多くの情報を書き込め、また一部が損傷しても補正して読み取ることが可能といった利点を持ちます。偽造医薬品への対策として実用化が期待されます。
■ 材料科学ニュースサイトMaterials Viewsの解説記事 ⇒ A Bitter Pill for Counterfeiters: Labeling Drugs with QR Codes