塩分の多い河口付近の湿地に育つマングローブは、樹に付いた状態のまま発芽した種子(胎生種子)が成長の途中で落下し、長い時には何か月も海面を漂ったのち根付くという独特の繁殖方法を採っています。高濃度の塩分・強い紫外線・潮の干満など、本来なら植物の生育に適さない要素に満ちた厳しい環境で育つマングローブには、繁殖においても独自の生存戦略があるのかもしれません。
このほどドイツのライプニッツ天然物質研究・感染生物学研究所の研究グループは、マングローブの胎生種子に棲む内生菌の代謝産物から、コリオール酸など3種のオキシリピン(酸素化脂肪酸)を分離することに成功しました。これらのオキシリピンはいずれも、これまでにイネなどの植物中で発見され、病原菌などからの防御物質として働いていることが知られています。こういった植物オキシリピンを植物の内生菌が生合成することが確認されたのは今回が初めてで、マングローブが環境ストレスから種子を守るために内生菌の助けを受けていることを示唆する発見として注目されます。
この研究成果をまとめた論文は、ChemBioVhem誌に発表されました。 (本文を読むにはアクセス権が必要です)
⇒ Ding, L., Peschel, G. and Hertweck, C. (2012), Biosynthesis of Archetypal Plant Self-Defensive Oxylipins by an Endophytic Fungus Residing in Mangrove Embryos. ChemBioChem. doi: 10.1002/cbic.201200544