<論文紹介> C60へのホウ素原子直接導入によるヘテロフラーレンC59Bの合成に初めて成功|フロリダ州立大Kroto教授、名古屋大・篠原教授らのグループが報告

フラーレンの炭素骨格の一部を窒素・ホウ素のような別の原子で置き換えたヘテロフラーレンは、元のフラーレンとは全く異なる性質を示すため、新規な電子材料として期待されています。窒素置換ヘテロフラーレンの合成は多くの研究者の取り組みによって近年大きな進展が見られたのに対し、一方ホウ素置換ヘテロフラーレンについては、C60に直接ホウ素原子を導入する戦略が見つかっていないため研究が遅れていました。

このほどAngewandte Chemie International Editionに掲載された論文で、フロリダ州立大学のHarold W. Kroto教授(フラーレンの発見で1996年ノーベル化学賞受賞)・名古屋大学の篠原久典教授らによる研究グループは、フラーレンC60の炭素原子をホウ素原子で直接置換することによるヘテロフラーレンC59Bの合成に初めて成功したと報告しました。今回採用された方法は、気化蒸発したホウ素にフラーレンを露出させるというシンプルなものです。ホウ素を含むC60誘導体を介する合成的方法に比べて簡便であり、また一般に市販されている純度90%のホウ素を使えるため低コストでのヘテロフラーレン製造が可能です。今後は工業的規模へのスケールアップや、フラーレン以外のナノ構造炭素材料への応用が期待されます。

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 ⇒ Dunk, P. W., Rodríguez-Fortea, A., Kaiser, N. K., Shinohara, H., Poblet, J. M. and Kroto, H. W. (2012), Formation of Heterofullerenes by Direct Exposure of C60 to Boron Vapor . Angew. Chem. Int. Ed.. doi: 10.1002/anie.201208244

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