今夏発表された2011年インパクトファクター(IF)で、全分野を通してランキング第1位となったジャーナルは、アメリカがん協会(American Cancer Society)のCA: A Cancer Journal for Clinicians(発行元:Wiley)で、そのIFは101.780でした。2位の著名医学誌The New England Journal of Medicine (IF 53.298)やNature, Scienceなどの有名総合誌に大きく差をつけたこの雑誌、高いIFには何か理由があるのでしょうか?
CA: A Cancer Journal for Clinicians(以下CAと略)のIFは今回突然上がったわけではなく、2005年から続けて全ジャーナル中第1位を守っています。実はCAはアメリカがん協会の唯一の雑誌ではなく、CAとは別に論文誌Cancer (IF 4.771)が発行されています。Cancerが年24回発行で毎号多数の論文を掲載するのに対して、CAは年6回発行(隔月刊)で、一号に載る論文・記事は3~4報しかありません。
しかし、CAに掲載される論文・記事は、がんに関する統計や診療ガイドラインなど公式性の高いものであることが多く、高い確率で引用されます。特に、毎年CAで発表される「Cancer Statistics」は、米国内のがん罹患数の公式統計で、毎回非常に多くの引用を受けます。例えばCancer Statistics, 2010は、発表されてから現在まで約2年間の被引用が3,700回以上にもなっています。IF算出時の「分母」となる論文数が少ない一方で、「分子」となる被引用回数を統計記事が大きく押し上げているのが、CAの高IFの理由です。
CAの統計記事が多数の引用を集めるのは資料的価値が高いからにほかなりませんが、文献の性格の違いを無視して一般の論文誌とCAのIFを比較しても、あまり意味がないでしょう。IFがジャーナルの影響力の序列をそのまま反映したものではなく、分野や総説論文の割合などさまざまな要因に左右されることはしばしば指摘されますが、このCAもその一例と言っていいかもしれません。(とはいえ、理由はともかくWileyの雑誌がIF首位だと思うと、個人的に満更悪い気はしません。)