忘年会にクリスマス・新年と、ビールをたしなむ機会が多いこの時期にふさわしい研究テーマかもしれません。米ワシントン大学のWerner Kaminsky教授らの研究グループは、ビール中の苦味成分イソアルファ酸のうち代表的なものであるイソフルモンとその誘導体の異性体をX線回折によって分析し、絶対配置を決定することに初めて成功しました。その成果は、このほどAngewandte Chemie International Editionで発表されました。
⇒ Urban, J., Dahlberg, C. J., Carroll, B. J. and Kaminsky, W. (2012), Absolute Configuration of Beer′s Bitter Compounds . Angew. Chem. Int. Ed.. doi: 10.1002/anie.201208450 (本文を読むにはアクセス権が必要です)
イソアルファ酸は、ホップに含まれるアルファ酸が加熱によって異性化したもので、ビールの特徴である苦味をもたらす成分です。イソアルファ酸にはシス/トランス異性体が存在することが知られていましたが、各異性体の絶対配置は決定に至っていませんでした。今回のKaminsky教授らの報告によって、過去の文献で暫定的に示された構造の多くが誤りであったことが明らかになりました。
イソアルファ酸やその誘導体の異性体はそれぞれ苦味の度合いが異なるだけでなく、いくつかの特定の異性体に血糖値降下・肥満防止など健康増進効果があると言われています。今回の構造決定によって、イソアルファ酸異性体の正確な同定が可能になり、生理活性の研究を促進することが期待されます。これまでになかった味のビールの開発にもつながると、なおいいですね。
■ 化学ニュースサイトChemistry Viewsの紹介記事
⇒ Chemistry Views: Beer’s Bitter