環状化合物ポルフィリンは、興味深い光学的・電子的性質を持つことから、人工光合成や太陽光発電などさまざまな用途への応用が期待されています。ポルフィリンの性質を制御し新規機能を付加するため、ポルフィリンに置換基を導入する試みが多くの研究者によってなされてきました。
京都大学理学研究科・大須賀 篤弘教授の研究室は、昨年(2011年)パラジウム触媒を用いてポルフィリンを直接アリール化したのに続き、今回、メソ位にホルミル基を持つニッケルポルフィリンを、同じ方法で直接アリール化することに成功しました。アリール化後に残ったホルミル基は種々の変換に利用できると考えられ、実際にそこからテトラリンフューズドポルフィリンやビニレン架橋ポルフィリン二量体が合成できることが確認されました。今回の成功は、新規機能を持つポルフィリンの合成につながることが期待でき、またニッケル以外の中心金属を持つポルフィリンを使った研究の発展にも道を開くものといえそうです。
■ この成果は、Chemistry - A European Journal誌に発表されました。(本文を読むにはアクセス権が必要です)
⇒ Tokuji, S., Awane, H., Yorimitsu, H. and Osuka, A. (2013), Direct Arylation of meso-Formyl Porphyrin. Chem. Eur. J., 19: 64–68. doi: 10.1002/chem.201203742
□ 化学ニュースサイトChemistry Viewsの紹介記事
⇒ Chemistry Views: Porphrin Synthesis Made Beta