<論文紹介> 自在にクネクネ曲がって物をつかめる「触手ロボット」(動画あり)|ホワイトサイズ研が開発に成功

ゾウの鼻、タコの足、アリクイの舌のように、自然界には細長く柔軟に曲がる触手状の器官が重要な役割を果たしている例が多くあります。このような動きを人工物で再現する、いわば「触手ロボット」の試みが多くの研究者によってなされてきましたが、その多くは、硬い部品を背骨のようにつないで延ばす方法をとっていたため、重量や構造の複雑さ、操作の難しさ、高コストなどがネックになっていました。

次々とユニークな新技術を打ち出すハーバード大のホワイトサイズ研は、2種類のエラストマー(弾力性材料)を組み合わせて、無関節の「触手ロボット」を開発しました。「触手」の内部には空気圧で膨らむ中空の穴(エアーチャンネル)が複数設けられていて、内部を通る極細のチューブでそれぞれの穴に空気を出し入れすることで触手を変形させ、任意の方向に曲げ伸ばしすることができます。(右図) 実験では、花や馬蹄型の取っ手に巻き付いてつかむことに成功しました。この成果は、このほどAdvanced Materials誌で報告されました。

 ⇒ Martinez, R. V., Branch, J. L., Fish, C. R., Jin, L., Shepherd, R. F., Nunes, R. M. D., Suo, Z. and Whitesides, G. M. (2013), Robotic Tentacles with Three-Dimensional Mobility Based on Flexible Elastomers. Adv. Mater., 25: 205–212. doi: 10.1002/adma.201203002 (本文を読むにはアクセス権が必要です)

一体どんな動きをするのか、百聞は一見に如かず、YouTube動画をご覧下さい。

(提供: ChemistryWorldUK)

この触手ロボットは、これまでの方法に比べて安価で比較的簡単に製造でき、軽量で操作しやすいといった利点があります。先端にカメラを付けて通常では届きにくい場所を撮影する、注射針を付けて液体を注入するといったさまざまな応用が考えられます。一方難点としては、構造的に現在の直径12mmより細くしにくい、重い物体を扱うには力不足、外部からの損傷に弱いといった点が挙げられています。

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