論文査読制度のあり方についての査読者の意識を知るため、2009年に大規模調査が行われ世界各国の約4千人の研究者から回答を得ました。その結果が、このほどアメリカ情報科学技術協会誌Journal of the American Society for Information Science and Technologyで報告されました。
⇒ Mulligan, A., Hall, L. and Raphael, E. (2013), Peer review in a changing world: An international study measuring the attitudes of researchers. J. Am. Soc. Inf. Sci., 64: 132–161. doi: 10.1002/asi.22798 (無料公開)
主な結果は以下の通りです。
- 現在の査読制度を総合的に見て「大いに満足」または「満足」という回答者は69%
- 回答者の84%が、査読は科学出版において重要な役割を果たしていると評価
- 現在の査読制度のあり方が最善と考えるのは32%、一方30%は抜本的な改革が必要との考え
- 直近の論文が査読プロセスを通じて改善されたと感じる回答者は91%
- 86%が査読を楽しんでおり、今後も続けたいと回答
- 過去12か月間に一度でも査読依頼を断ったことがあるのは61%。最も多い理由は「内容が自分の専門外」(58%)で、次いで「多忙」(49%)「先に別の査読依頼を受けている」(30%)
- 査読の方法として、著者・査読者とも相手の名前を知ることができない「ダブル・ブラインド」方式を、76%の回答者が最も効果的と評価。この割合は人文社会科学(87%)と医学(83%)で特に高く、天文学・物理学(66%)でやや低い
- 誰が査読したか著者に分かる「オープン・ピアレビュー」は、率直な査読コメントが書きにくくなると不評。一方、論文の著者が誰か査読者に分かるのは、「著者の名声や所属機関・出身国によるバイアスが生じる」との批判がある一方、「剽窃を察知できる」などのメリットを挙げる回答者も
- 利用統計(論文のダウンロード数)が査読の代わりになると考える回答者は、材料科学(24%)で最も多く、人文社会科学(9%)で最低。「査読者の意見より利用統計の方が客観的」といった肯定的意見がある一方、「多くの読者に注目されることと論文の価値は別」との否定的意見も
- 査読を「出版後のレビュー」(読者コメントなど)で補うのが効果的と考えるのは、全体の47%。医学(54%)で最高、化学(35%)で最低。査読者が見落とした誤りを発見できると評価する意見がある一方、混乱を招くだけとの批判もある
調査結果のさらに詳しい内容は、上のリンク先をご覧下さい。