Wileyの学術出版部門の上級副社長Steve Mironが、研究情報管理者向けの専門誌Research Informationのインタビューに答え、学術誌出版の最近の動向と、特にオープンアクセス出版の意義について語っています。
⇒ INTERVIEW: Open access could prevent rejection of good science (Research Information: December 2012/January 2013)
世界的に見て、研究開発への投資額は増加傾向が続いており、それに伴って執筆される論文の数も、またそれらに対する読者からの需要も上昇の一途を辿っています。Wileyの学術誌に投稿される論文の数は毎年10%ほど増え、論文の利用(アクセス数)は毎年20~30%の伸びを示しています。
しかしながら、世界各国の図書館予算は近年厳しい状況にあるため、ここ数年に新しく創刊された学術誌は、たとえ質的に優れていても、十分な購読を得ることができずに苦戦する傾向にあります。Wileyでは、投稿される年間約45万報の論文のうち、現在およそ1/3をアクセプトしていますが、今のように新しい学術誌が育ちにくい状況が続くと、価値ある研究成果が世に出にくくなる事態が懸念されます。
Miron副社長は、現在大きな潮流となっている著者課金方式によるオープンアクセス(Gold OA)は、重要な研究領域で新しい創刊誌が育つのを助ける役割を果たすと見ています。例えば、The European Molecular Biology Organisation(EMBO、欧州分子生物学機構)がWileyと共同で出版するジャーナルEMBO Molecular Medicine(2009年創刊)は、その質の高さに見合った有料購読をなかなか得られませんでした。Wileyでは、EMBOの協力を得て、2012年に同誌をオープンアクセスに転換しました。これまでのところ良質の論文が以前と変わらず投稿されており、インパクトファクター10を超える同誌のオープンアクセス化は、成功の兆しが見えているとのことです。
ただし、学術誌出版全体が一気にオープンアクセス化に向かうのではなく、当面は従来の有料購読や、各出版社による新しい試みを含めたさまざまな出版モデルが共存する状態が続くだろうとMiron副社長は語っています。