炭素ベースの多孔性物質であるカーボンエアロゲルは、液体浄化のために油や汚染物質を取り除くための吸収材として、また高い電気伝導性を持つことから伝導材料として優れた性能を持ち、さまざまな方面での応用が期待されています。しかし、化学気相蒸着(CVD)などによる従来の製造法は高コストになることが避けられず、実用化に向けては安価で大量生産に適した製造法の開発が課題となっていました。
このほど中国科学技術大学のShu-Hong Yu教授らの研究グループは、微生物発酵によって大量生産できるバクテリア・セルロースを原料に、簡単かつ安価にカーボンナノファイバー(CNF)エアロゲルを製造する方法を開発するとともに、このCNFエアロゲルが油や有機溶媒の吸収に優れた性能を持つことを確認し、その成果をAbgewandte Chemie International Edition (ACIE)に発表しました。
⇒ Wu, Z.-Y., Li, C., Liang, H.-W., Chen, J.-F. and Yu, S.-H. (2013), Ultralight, Flexible, and Fire-Resistant Carbon Nanofiber Aerogels from Bacterial Cellulose . Angew. Chem. Int. Ed.. doi: 10.1002/anie.201209676 (本文を読むにはアクセス権が必要です)
この方法によって製造されたCNFエアロゲルは、4~6 mg/cm3という軽量で、さまざまな種類の油や有機溶媒に対して、これまでのほとんどのカーボンエアロゲルに勝る自重の106~312倍という高い吸収性能を示します。また耐加熱性にも優れ、吸い込んだ油や有機溶媒を燃焼や蒸留によって取り出す工程を繰り返しても、吸収性能はわずかしか低下しませんでした。
この特性を生かして汚染物質の浄化用の吸収材に使えるほか、圧力センサーや電極材などへの利用も可能とされています。カーボンエアロゲルの広範な普及につながる可能性のある成果として期待されます。