<論文紹介> 酸化グラフェンと高分子による人工真珠層|天然の真珠層の2倍の靱性を実現(ACIE)

貝類が作り出す真珠層(nacre)は、炭酸カルシウム(CaCO3)の微結晶を生体高分子で接着することにより、非常に優れた強度(引張強さ)と靱性(粘り強さ)を兼ね備えています。このような真珠層の特性を人工的に再現しようと、さまざまな材料を使った試みがなされてきました。その中でも近年は、グラフェンに水溶性を持たせた酸化グラフェン(graphene oxide = GO)が有望視されていますが、強度を高めると靱性が損なわれる傾向にあり、二つを両立させることがなかなかできませんでした。

このほど北京航空航天大学のQunfeng Cheng教授らの研究グループは、天然真珠層の構造を還元酸化グラフェン(rGO)と高分子を使って模倣し、強度・靱性とも天然のものを上回る超強靭な人工真珠層を合成することに成功しました。
 ⇒ Cheng, Q., Wu, M., Li, M., Jiang, L. and Tang, Z. (2013), Ultratough Artificial Nacre Based on Conjugated Cross-linked Graphene Oxide . Angew. Chem. Int. Ed.. doi: 10.1002/anie.201210166
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同グループは、天然真珠層にならって、10,12-ペンタコサジイン-1-オール(PCDO)を高分子化したものでrGOを接着させました。ちょうど、rGOがレンガ、PCDOがそれらをつなぐモルタルの役割を果たします。その結果できあがった人工真珠層は、強度が平均129.6MPa、最高で156.8MPaと天然真珠層の80-135MPaを上回り、さらに靱性は天然ものの1.8MJ/mに対して3.91MJ/mと2倍以上の値を示しました。この人工真珠層は、非常に高い電気伝導性を示すことも特徴としています。その強靭さを生かして航空宇宙材料として、また電極などの電子材料としてなどの応用が期待されます。

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