Introduction to Finite Strain Theory for Continuum Elasto-Plasticity
Koichi Hashiguchi, Yuki Yamakawa
ISBN: 978-1-1199-5185-8
Hardcover / 440 pages / November 2012
US$140.00
有限弾塑性論に関する初めての専門書・教科書として書かれた本書は、昨年11月のWiley理工書ベストセラー第1位になるなど刊行直後から好評を博しています。
今回、山川 優樹・東北大学准教授とともに本書を執筆された橋口公一・九州大学名誉教授から、詳細な内容解説を寄稿いただきました。当分野に関心のある方はぜひご一読いただき、購入のご検討にお役立て下さい。
工業技術の飛躍的発展に応じて,高度な力学設計が求められているが,その基本は弾塑性設計に他ならない.したがって,多くの弾塑性論に関する書籍が出版されているが,これらは,微小変形・微小回転に限定した微小弾塑性論,あるいは,速度勾配テンソルの対称部分としてのひずみ速度テンソルの弾性,塑性部分への加算分解を前提とし,また,現配置のテンソルを用いる亜弾性‐塑性構成式を前提としている.しかし,ひずみ速度テンソルの加算分解の成立は,微小弾性変形に限定され,また,現配置のテンソルは,剛体回転の影響を直接受けるので,応力や内部変数の速度については,客観速度テンソルに塑性スピンテンソルを加味した複雑な定式化が求められる.加えて,数値計算においては,応力および内部変数の算定に当って,これらを一旦,回転に依存しない基準配置にプルバックした後,時間増分を加え,それをプッシュフォーワードして現配置に戻す煩雑な数値積分が求められる.
亜弾性‐塑性構成式の上述の欠点を解消し得る超弾性‐塑性構成式の究明が進められ,2000年頃にその基礎が築かれ,2005年頃に至って具体的な弾塑性構成式およびそれに伴う数値解析法がほぼ確立されたといえる.本構成式においては,変形勾配テンソルを弾性,塑性部分に乗算分解し,弾性ひずみテンソルを弾性変形勾配テンソルにより定義し,これに対して応力を超弾性式として関係づけるので,弾性変形が厳密に表現される.また,ひずみテンソルから塑性ひずみ速度の集積値を除いて得られる弾性ひずみテンソルを超弾性式に入力することにより,時間積分によらずに,応力が直接かつ厳密に算定される.内部変数についても同様である.したがって,有限弾塑性変形が厳密に表現されるとともに,超弾性構成式を前提とするリターンマッピング‐整合接線係数テンソルによる高効率・高精度な数値計算が実現される.本書は,有限弾塑性論についての初めての専門書で,次の基本的事項をはじめ,具体的な有限弾塑性構成式および数値解析法が詳細に解説されている.
- 微小弾塑性論と有限弾塑性論の基本的相違
- ベクトル,テンソル解析基礎論
- 曲線座標系におけるテンソル表現,共変微分
- テンソルのプルバックおよびプッシュフォワード操作
- 物質時間微分,埋込み (Lie) 微分,客観性の本質的意味
- 客観速度テンソル,共回転速度テンソル
- 各種の応力(速度)テンソル,ひずみ(速度)テンソル
- 超弾性,Cauchy弾性および亜弾性構成式
- 変形勾配テンソルの弾・塑性乗算分解とその物理的意味
- 弾性変形勾配テンソルによる超弾性構成式
- 塑性変形勾配テンソルのエネルギー貯留・消散部分への乗算分解
- 塑性変形勾配テンソルのエネルギー貯留部分による内部変数の超弾性構成式
- 内部変数の超弾性構成式による非線形移動硬化則の成立
- 仕事共役な応力テンソルとひずみ速度テンソル
- Mandel応力テンソルおよび共役塑性ひずみ速度テンソル
- リターンマッピングおよび整合接線係数テンソル,Exponentialマップ
- 単純せん断,片持ち梁等の変形解析例
なお,基本概念や物理的意味が分り易く説明され,また,全ての式の誘導過程が飛躍無しに示されているとともに,本書に解説された解析についての計算プログラムが添付されているので,それにより具体的解析が実行可能である.
大学院生の思考能力涵養の面からゼミテキストとして好適であるとともに,教官の研究の糧として,また,企業技術者の力学設計の抜本的改善に向けて一読が望まれる.