Bioinspiration and Biomimicry in Chemistry: Reverse-Engineering Nature
Gerhard Swiegers (Editor), Jean-Marie Lehn (Foreword by), Janine Benyus (Foreword by)
ISBN: 978-0-470-56667-1
Hardcover / 508 pages / October 2012
US $39.95
(上の書名または表紙画像をクリックすると、内容情報にリンクします)
ひとつ前の記事で、米国出版社協会の学術出版賞PROSE Awardsを受賞したWileyについてお知らせしました。そのうち「化学・物理学」部門賞に輝いた“Bioinspiration and Biomimicry in Chemistry”の内容を、もう少し詳しくご紹介します。
生物の構造や機能をまねて新技術につなげる「バイオミメティクス」(生物模倣)の手法を用いた研究は、ますます盛んになる一方で、当ブログでもヤモリの足裏を模倣した強力な接着材料や世界一美しい蝶・モルフォ蝶の青い輝きを再現、プラチナコガネの金属光沢を液晶ポリマーで模倣といった記事でその成果をご紹介してきました。本書の序文によると、1985~2005年の20年間で、米国の特許件数全体は2.7倍に増えましたが、そのうち”biomimetic”(生物模倣による)または”bioinspired”(生物に触発された)という語を件名に含む特許は93倍にも増加したそうです。
この生物模倣のアプローチを、ある限られた研究領域に焦点を絞って論じた本はいくつも出ていますが、本書は、化学全体をカバーして、生物模倣の多様な手法を体系的に解説している点が特徴となっています。自己組織化、分子マシン、バイオミネラリゼーション、触媒、接着力や輝きを持つ表面構造、光収穫、有機合成などの分野・主題が取り上げられ、それぞれにおいて生物模倣のアプローチがもたらした成果をバランスよく、分かりやすく提示します。
各章はそれぞれの主題の専門家が執筆し、最新の研究成果に基づいて記述されています。読者自身の研究分野に直接関連する章だけを読んでも非常に参考になり、また全章を通読することで、生物模倣のアプローチがどういうものか深く理解できるようになります。このホットな主題に関するスタンダードな参考書として、長年にわたって利用できそうな一冊です。
各章の構成 ⇒ 詳しい目次はこちら
- Introduction: The Concept of Biomimicry and Bioinspiration in Chemistry 1
- Bioinspired Self-Assembly I: Self-Assembled Structures 17
- Bioinspired Self-Assembly II: Principles of Cooperativity in Bioinspired Self-Assembling Systems 47
- Bioinspired Molecular Machines 71
- Bioinspired Materials Chemistry I: Organic–Inorganic Nanocomposites 121
- Bioinspired Materials Chemistry II: Biomineralization as Inspiration for Materials Chemistry 139
- Bioinspired Catalysis 165
- Biomimetic Amphiphiles and Vesicles 209
- Bioinspired Surfaces I: Gecko-Foot Mimetic Adhesion 251
- Bioinspired Surfaces II: Bioinspired Photonic Materials 293
- Biomimetic Principles in Macromolecular Science 323
- Biomimetic Cavities and Bioinspired Receptors 367
- Bioinspired Dendritic Light-Harvesting Systems 397
- Biomimicry in Organic Synthesis 419
- Conclusion and Future Perspectives: Drawing Inspiration from the Complex System that Is Nature 455