“Nutraceuticals”(ニュートラシューティカルズ)は、nutrition(栄養)とpharmaceuticals(医薬品)を合わせた造語で、サプリメントや健康食品を含む栄養補助食品全般を指す概念です。日本はもちろん世界的にも関心・需要が高まる栄養補助食品ですが、有効性についての科学的な裏付けが不明確だったり、安全性が問題になるケースもしばしばあり、各国で政府機関による規制の動きが始まっています。それだけに、栄養補助食品に対する科学的な研究は、今後ますます重要性を増しそうです。
このほど発行されたBritish Journal of Clinical Pharmacology誌の2013年3月号では、このNutraceuticalsに関する主要なテーマを選んで、効果や作用機序を検証する総説論文を集めた特集セクションを掲載しています。各論文では過去の研究や臨床試験の結果が整理してまとめられているので、最新の知見を知るとともに、引用文献を参考に関連の研究を進めるうえで役立ちそうです。この号は現在無料公開されていて、どなたでもお読みいただけます。
⇒ 同号の目次
収録論文の中から、一部をご紹介します。
■ Bioavailability of bioactive food compounds: a challenging journey to bioefficacy
健康に役立つ成分を含む食品をいくら食べても、有効成分が効率よく体内に取り込まれなければ意味がありません。著者は、服用した薬物が体内で実際に利用される割合を示すBioavailability(生物学的利用能)の概念を使って、食品成分のBioavailabilityを左右するメカニズムや、Bioavailabilityを改善するための技術を解説します。またコーヒー・お茶・ココア・柑橘類などの食品を例に、過去の文献からBioavailabilityに影響すると考えられる要因を検討します。
■ The antioxidant paradox: less paradoxical now?
ポリフェノールなどの抗酸化物質は、体内の活性酸素による酸化ストレスが引き起こす疾患の予防・治療に役立つとされ、注目を集めています。しかし著者によると、活性酸素がいくつかの疾患の原因となっていることは確からしいのに、これまでの多くの研究は、人が大量の抗酸化物質を摂取してもほとんどあるいは全く予防・治療効果がないという結果を示していて、これは「抗酸化物質のパラドックス」と呼ばれているそうです。著者は過去の研究に基づき、このパラドックスが起こる理由を検討します。
■ Omega-3 polyunsaturated fatty acids and inflammatory processes: nutrition or pharmacology?
魚油などに多く含まれる「オメガ3不飽和脂肪酸」は、抗炎症効果があるとされ、サプリメントとして広く販売されています。著者によると、オメガ3は動物実験レベルではさまざまな効能が報告されていますが、人を対象とする臨床試験では、リウマチに対しては有効性を示すエビデンスが得られている一方、炎症性腸疾患・ぜんそくについては一貫性のある結果が得られていないとのことです。
■ Phytonutrients for bone health during ageing
柑橘類やオリーブを多く摂取する「地中海式ダイエット」は、老化に伴う骨粗しょう症の予防にも効果があると言われ、近年注目されています。著者は、フラボノイドなど主な成分について、骨の健康との関わりを調べた過去の研究を再検討した結果、特定の成分が持つ効果については結果が一貫せず、引き続き研究が必要だとする一方で、一般に推奨されている「毎日5食分(5 servings)の野菜・果物の摂取」は、データから見て骨の健康にも有効かもしれないとしています。