心臓ペースメーカーなど、体内への埋め込み(インプラント)可能な医療機器の開発がさまざまな分野で進んでいますが、多くの場合課題となるのが、機器を駆動するための電力をどうやって供給するかという点です。体内に埋め込んだ電池を、ケーブルや電波の照射によって充電する方法も考えられていますが、現在大きな期待を集めているのが、「バイオ燃料電池」(biofuel cell)の技術を使って体内の糖から発電する方法です。そのような医療目的のバイオ燃料電池研究の展開をまとめたミニレビューが、ChemPhysChem誌に掲載されました。
⇒ Falk, M., Narváez Villarrubia, C. W., Babanova, S., Atanassov, P. and Shleev, S. (2013), Biofuel Cells for Biomedical Applications: Colonizing the Animal Kingdom. ChemPhysChem. doi: 10.1002/cphc.201300044 (本文を読むにはアクセス権が必要です)
次世代型の電池として注目される燃料電池は近年急速な技術進歩を遂げ、その中で酵素を触媒として使うバイオ燃料電池の研究も進んでいます。バイオ燃料電池が、体内にある糖を燃料に用いて発電できるようになれば、外部からの充電や燃料補給なしにインプラント医療機器を動かし続けることが可能になります。
生体に埋め込み可能なバイオ燃料電池が最初に報告されたのは2003年のことで、そのとき実験に使われたのはブドウの実でした。その後、2010年以降になって、ラットやウサギなどの動物を使った実験例が報告されるようになりました。ほかにはゴキブリ、シイタケ、カタツムリ、貝などを使った研究も報告されています。実用化に向けては、酵素触媒の安定性や電池の耐久性の確保など課題が残っていますが、ナノテクノロジーなどの成果を学際的に取り入れることによって克服されることが期待されます。