男性は、美女から見られていると太っ腹なところを見せようとして利他的に行動するが、女性はイケメンがいてもそうしない - もっともらしく思う人もそうでない人もいるかもしれませんが、これを裏付ける実験結果が、英国心理学会(The British Psychological Society)の公式誌British Journal of Psychologyに発表されました。
⇒ Van Vugt, M. and Iredale, W. (2013), Men behaving nicely: Public goods as peacock tails. British Journal of Psychology, 104: 3–13. doi: 10.1111/j.2044-8295.2011.02093.x (無料公開中)
英国の大学生を対象に行われた2つの実験の一つ目では、参加者は実験室でPCを通じてゲームに参加します。このゲームでは、各参加者は最初に3ポンド(約420円)を受け取り、そのうち好きな額を、その場にいない他の5人の参加者との共有資金として出資し、残りは自分で取っておくよう言われます。6人から集まった共有資金は、ゲームの終了時に倍額に増やされて、各参加者の出資額に関係なく均等に分配されるというのがルールです。自分の損得だけを考えると、自分の3ポンドは手元に残しておいて、他の参加者の出資から分配金を受け取るのが一番有利ですが、他人の目から見ると恰好のいいものではないですね。この実験では、実験室にサクラとしてイケメンと美女のどちらかが同席している場合と、どちらもいない場合の計3通りで参加者の反応を比較しました。その結果、男性参加者の平均出資額は、美女が同席した場合が2.56ポンドで最も多く、イケメン同席時の1.84ポンド、同席者なしの場合の1.93ポンドを大きく上回りました。一方、女性の参加者では、3通りの条件の違いで目立った差は見られませんでした。
二つ目の実験は一つ目の変形で、一人で実験室に入った男子学生が、別々の部屋にいる2人の男子学生と3人一組となって、1ポンド(約140円)のうち好きな額を出資するゲームを5回繰り返すよう言われます。この実験では、参加者は「ゲームに参加する3人のほかに、別の1人がオブザーバーとしてゲームの進行を観察する」と告げられ、オブザーバーになる美女またはイケメン(どちらもサクラ)の顔写真を見せられます。ほかの2人のゲーム参加者(男子学生)の顔写真と、彼らの毎回の出資額もその都度見せられます。美女・イケメンがオブザーバーの場合と、オブザーバーがいない場合との計3通りで、ゲームを5回行って出資額の推移を比較したところ、美女がオブザーバーの場合、平均出資額は1回目の68ペンスから5回目は84ペンスまで上昇しました。他の参加者との競争心をあおられたということでしょうか。一方、イケメンがオブザーバーの場合はゲームの繰り返しとともにわずかに減少、オブザーバーなしの場合は大幅に減少しました。また、ゲームがすべて終了した時に、大学のボランティア活動にどのくらいの時間参加してもいいと思うか各参加者に質問したところ、美女がオブザーバーだった参加者は、他よりも長い時間参加しようとする傾向を示しました。
この結果について、実験を行った心理学者らは、クジャクのオスが鮮やかな羽根でメスを引き付けるのと同じように、男性は公益のために気前よく奉仕するところを見せることで女性の目を引こうとすると説明しています。この論文を締めくくる、「この研究結果は、どうすれば公益活動の供給を刺激できるかを示している」という一文が苦笑を誘います。