来週の日本化学会をはじめ、全国各地で連日さまざまな学会が開催されるシーズンを迎えました。口頭発表のスライド作りやリハーサルに忙しい方が多いことと思います。
そんな時期にタイミングよく、口頭発表を成功させるために押さえるべきポイントを解説する記事が、Angewandte Chemie International Edition (ACIE)に掲載されました。執筆者のカリフォルニア大学サンタバーバラ校Craig J. Hawker教授は、読者が自分のペースでいくらでも時間をかけて読める論文と違って、時間が限られた口頭発表には、内容を効率よく伝えるための独自のテクニックが必要だと説きます。ご自分の発表を前に、チェックしてみてはいかがでしょうか。
⇒ Hawker, C. J. (2013), Effective Presentations—A Must. Angew. Chem. Int. Ed.. doi: 10.1002/anie.201209795 (無料公開)
以下は記事の要点の抜粋ですが、原文はさらに詳しく書かれていて、2ページしかなく簡単に読めますのでぜひご一読をお勧めします。
基本
- 自分が発表で伝えたいメッセージを明確に。そのために、自分の研究が聴衆にとってなぜ重要で、どんな意味合いを持つのか考えてみましょう。
- その上で、どのような層の聴衆に話すか(同じ専門分野の研究者か、より広い層か)を考慮してストーリーを組み立てましょう。
スライド
- 図表は、一目見て瞬時に理解できるようシンプルに。論文からコピペしただけの図表は、印象が悪くなります。
- 「1スライドに1メッセージ」が原則です。図表を一つ一つ見直して、どうしても必要と思えるもの以外はためらわずカットしましょう。ぎっしりと書き込まれたスライドを見せておきながら、「細かいところは無視していただいて結構です」などというのは論外です。
- 見にくいフォントや色を使うと、聴衆の気が散って理解の妨げになります。
- テキストは必要最小限に。スライドに文章を長々と書いて、発表時にそのまま読み上げる人がいますが、それはやめましょう。スライドのタイトルは、そこで伝えたいメッセージを強調するものにしましょう。
リハーサル
- リハーサルは人に聞いてもらって、時間配分や流れをチェックしましょう。時間切れになって、最後の何枚かのスライドを飛ばしたり、駆け足で終わらせるようでは良い印象を残せません。
話し方
- 発表者がスクリーンを見ていいのは、レーザーポインターで指すときだけです。なるべく多くの聴衆とアイコンタクトを持つようにしましょう。
- 自信に満ちたプロらしい態度も重要です。外見にも気を配りましょう。
- 次の言葉を発する前に、沈黙を「えー」などで埋めるのは避けましょう。むしろ沈黙を「間合い」として有効に使いましょう。発表の中で重要なポイントに差し掛かったら、話すテンポや声の抑揚を変えるのも効果的です。
いかがでしたか。既に常識としてご存知のこともあったでしょうが、実際の口頭発表で目にする「あるある」的なことも含まれていて、なかなか役に立ったのではないでしょうか。ぜひ原文も併せてお読み下さい。
それでは、皆さんの発表が成功するようお祈りしています!