自然界のハスの葉やアメンボの脚にヒントを得た、水を強力にはじく撥水表面は、水濡れせず、また汚れを雨水でセルフクリーニング(自己洗浄)できるなどの利点が注目され、産学で活発に研究されています。身近なところでは、ご飯や焦げがこびりつかない炊飯器・フライパンなどの調理器具も、撥水コーティングによって実現したものです。撥水性の度合いは表面と水滴との接触角によって決まり、接触角が150°を超えた状態が「超撥水性」と定義されています。
材料表面の撥水性を高めるための加工法は改良を重ねられてきましたが、接触角が最大の180°に限りなく近づいたほぼ完全な超撥水表面を実現するには、固体・液体・蒸気の界面の緻密な制御が求められ、依然として困難を極めていました。このほどチューリッヒ大学物理化学研究所のStefan Seeger教授らは、シリカナノ粒子の凝集体にシリコーン・ナノフィラメントを蒸着させることにより、接触角179.8°という完全に近い超撥水性表面を実現しました。今回開発された加工法は、シンプルなやり方で超撥水表面を実現できることから、今後さまざまな方面で応用につながる可能性があります。
この成果を報告する論文は、ChemPhysChem誌に発表されました。(本文を読むにはアクセス権が必要です)
⇒ Zhang, J. and Seeger, S. (2013), Silica/Silicone Nanofilament Hybrid Coatings with Almost Perfect Superhydrophobicity. ChemPhysChem. doi: 10.1002/cphc.201200995