<論文紹介> カーボンナノチューブによる高機能不斉触媒の固定化|微化研・柴崎所長らが成功、高価値な触媒をろ過分離で再利用可能に(ACIE)

微生物化学研究所・柴崎 正勝所長らの研究グループは、高機能不斉触媒をカーボンナノチューブ(CNT)に担持させることにより、触媒性能を維持したまま簡単なろ過分離で再利用可能にする方法の開発に成功し、その成果をAngewandte Chemie International Edition (ACIE)で報告しました。

 ⇒ Ogawa, T., Kumagai, N. and Shibasaki, M. (2013), Self-Assembling Neodymium/Sodium Heterobimetallic Asymmetric Catalyst Confined in a Carbon Nanotube Network . Angew. Chem. Int. Ed.. doi: 10.1002/anie.201302236
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医薬品などの化学合成に欠かせない不斉触媒ですが、そのほとんどは溶液の状態で性能を発揮するため、使用後に回収してリサイクルするには多大な手間やエネルギーを要し、事実上一回きりしか使えませんでした。ろ過分離で再利用できるよう不斉触媒の固定化・不溶化をめざしてさまざまな方法が試みられましたが、触媒性能の低下を招いてしまうことが多く実用化は困難でした。不斉触媒の性能を維持したまま簡単に再利用できるようにする方法の開発は、研究者にとって大きな課題となっていました。

柴崎所長らのグループがこれまでに開発したニトロアルドール反応のためのNd/Na不斉触媒は、自己組織化によって不溶化する特長を持つことが分かっていましたが、不溶化触媒の粒径が小さく安定性も低いことから、再利用は困難でした。今回同グループは、この触媒をカーボンナノチューブ(CNT)溶液に混ぜると、CNTの網目状のネットワーク内で自己組織化を行い、簡単に担持できることを発見しました。この方法でCNTに担持させたNd/Na触媒は、高活性・高立体選択性を示すとともに、簡単なろ過操作で分離でき、繰り返し再利用しても高い性能を維持することが分かりました。

同グループは、このCNT触媒を用いて高脂血症治療候補薬であるアナセトラピブの不斉合成を達成しました。抗インフルエンザ薬リレンザなどさまざまな医薬品合成にも応用できるこの触媒は、再利用化によって実用性が大幅に向上したことから、今後医薬品の安価な大量合成を実現する基盤技術となることが期待されます。

■ 参考リンク: 高性能で再利用可能な「ナノチューブ触媒を開発」 ~効率的な医薬品合成に新たな展開~ (科学技術振興機構(JST)・公益財団法人 微生物化学研究会 微生物化学研究所 共同発表資料)

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