銀ナノ粒子は、殺菌・抗菌作用を持つため、医療用品や化粧品、また水や空気の浄化用などに広く利用されるようになっています。しかし一部の細菌は、銀ナノ粒子に長時間さらされると耐性を身に付け、かえって繁殖が促進されることが分かりました。オーストラリアのニューサウスウェールズ大学を中心とする研究グループがSmall誌で報告しています。
⇒ Gunawan, C., Teoh, W. Y., Marquis, C. P. and Amal, R. (2013), Induced Adaptation of Bacillus sp. to Antimicrobial Nanosilver. Small. doi: 10.1002/smll.201300761
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■ 参考リンク: Bacteria Adapt and Evade Nanosilver’s Sting (ScienceDaily, May 8, 2013)
同グループは、殺菌の標的となる大腸菌とともにさまざまな細菌が混在する微生物相を、銀ナノ粒子に曝露させました。その結果、大腸菌に対しては殺菌作用が働きましたが、時間の経過とともに微生物相中のバチルス属菌が銀ナノ粒子への耐性を獲得し、急速に増殖するようになりました。いったん耐性を持ったバチルス属菌は、銀ナノ粒子への曝露が終わった後も、耐性と強い繁殖力を維持することも確認されました。
バチルス属菌が銀ナノ粒子に対する耐性を獲得することが確認されたのは、今回が初めてです。銀ナノ粒子が広範に使用されるのに伴って抵抗力を持つ細菌が増え、製品の使用者や環境に対して害を及ぼす可能性があることから、研究グループは注意を呼びかけています。
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