最近話題の「3Dプリンタ」を活用した新技術の報告が相次いでいます(例)。そうした中、ハーバード大などの共同研究チームは、3Dプリンタで電極を「印刷」することにより超小型・高性能のリチウムイオン電池を開発することに成功し、その成果をAdvanced Materials誌で報告しました。
⇒ Sun, K., Wei, T.-S., Ahn, B. Y., Seo, J. Y., Dillon, S. J. and Lewis, J. A. (2013), 3D Printing of Interdigitated Li-Ion Microbattery Architectures. Adv. Mater.. doi: 10.1002/adma.201301036 (本文を読むにはアクセス権が必要です)
医療用などの目的として極小サイズの機器「マイクロマシン」の開発が進められていますが、しばしば障害になるのが、電力供給のための電池の問題です。マシン本体がいくら小さくても、内蔵する電池がかさ張っては意味がありません。マイクロマシンの実用化のためには、マシンに見合った小さなサイズで、しかも性能に優れた「マイクロバッテリー」が求められていて、その開発に多くの研究者が取り組んでいます。
リチウムイオン電池の性能を高めるには、電極のアスペクト比(幅と高さの比)を高めることが重要なポイントで、マイクロバッテリーにおいてはそのために緻密な加工技術が要求されます。ハーバード大のJennifer A. Lewis教授を中心とする研究チームは、電極材料となるリチウム化合物のナノ粒子を含む「インク」を、3Dプリンタから30 μm(0.03 mm)という髪の毛以下の細さで射出し、8~16回折り重ねた櫛のように成形することで、高アスペクト比を示す電極を実現しました。2つの櫛の歯の部分を噛み合わせるようにして、縦横とも1 mm未満に収まる超微小な正・負の電極が出来上がりました。これをプラスチックの容器(内のりが縦横2.1 mm四方、高さ1.5 mm)に入れて電解液で満たすと、期待通りリチウムイオン電池としての働きを示しました。
この電池の性能は、これまで報告された他の製法によるマイクロバッテリーの最高水準に匹敵するとのことです。Lewis教授らのチームの手法は、電池の形状の改善や今後の3Dプリンティング技術の進歩によって、さらに性能向上が期待できる将来性の高いアプローチといえそうです。
■ ところでこの論文は、6月17日にオンライン公開されたばかりですが、材料科学のニュースサイトMaterials Viewsのほか、読者のツイートやニュースサイト・科学ブログで取り上げられるなど、ネット上で多くの反響を呼んでいます。現在Advanced Materials誌などで試験導入中のAltmetricを利用すると、この論文について言及したツイートやネットニュース、ブログを簡単に見つけて読むことができます。ニュースサイトでは、内容解説のほか3Dプリンタが電極を出力するところの動画などが見られますので、ぜひお試し下さい。論文画面上のロゴにカーソルを当てると表示されるポップアップ画面(下図)でSee more detailsをクリックするか、またはここから直接リンクを辿って下さい。